Research Abstract |
茨城県土浦市の中心市街地を対象に現状の熱環境・エネルギー・CO_2排出量の分析を進めるとともに,東京都港区南青山地区を対象とした,用途地域と熱環境との関係の分析及び緑化による熱環境緩和対策について検討した。 申請者らが開発した地域特性・住まい方を考慮した家族類型別のエネルギー消費スケジュールを用いて,3D CAD対応熱環境シミュレータにより,住宅街区を対象に夏季及び冬季晴天日のエネルギー消費量を算出した結果からは,同一住宅であっても家族類型や住まい方の違いにより,夏季においては最大4倍,冬季においては最大約7倍のエネルギー消費量の差がみられる等,周辺環境とともに住まい方を考慮した環境負荷抑制対策の必要性が示された。また対象地域の特徴として,用途地域等の都市計画制度よりも,江戸時代から続く敷地割りの影響の方が大きいことから,都市計画制度による影響度合いを考慮した施策の必要性が示唆された。 一方,港区南青山地区を対象に,用途地域制度と建物の特徴との関係を考察した結果,用途地域ごとの法定容積率に対する充足率が高く,特に幅員約20mの幹線道路沿道では,10階以上の建物が大部分を占めた。ただし,道路幅員が4~6mの幹線道路後背地では容積率が制限され,2~4階の建物であった。これらの特徴を踏まえ,夏季熱環境について分析した結果,南北幹線道路沿道の西側高層建物では,後背地が低層なため西日の影響を強く受け,熱帯夜の形成に寄与していることなどが考察された。 そこで,これらの幹線道路沿道の商業・業務街区や後背地側の戸建住宅街区を対象に,荷重条件や日照条件を踏まえた実現可能なレベルの緑化を行い,熱環境緩和の可能性を検討した。その結果,南北幹線道路西側沿道建物の西壁面は壁面緑化可能空間が多く,集中的な緑化により夜間の熱環境緩和に有効なこと,日中の熱環境緩和対策には,戸建住宅街区の陸屋根及び緩傾斜屋根面が有効なこと等が示された。
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