Research Abstract |
本研究では,英国ウェールズのDesign Commission for Walesが実施しているDesign Reviewの実態を調査した.まず,英国都市計画におけるDesign Reviewの位置づけを把握するために,ローカルプランニングオーソリティ(PLA)が計画許可のために発行している文書を分析した.その結果,法的拘束力を持っていないのに関わらず,ある程度は機能していることが把握された.法的拘束力がないのにどうして機能しているかを把握するため,Design Reviewが案件に対して公表する文書を分析した.その結果,大きな変更があるが受け入れる場合,小さな変更のため,受け入れる場合,受け入れない場合があることが把握され,それぞれが同じ程度の件数があることが確認された.また,文書は,Design Reviewの判断,その根拠,より好ましいデザインにするための具体的な提案が示されている.Design Reviewが受け入れないと判断した場合でも,PLAには計画許可申請ができるため,その後の判断はPLAが決定することになる.しかし,DRの徹底した情報公開によって,関係者以外の人々の支持を受けているという事実も把握された.このように,文書における根拠と具体的改善案の明示,徹底した情報公開が,法的拘束力がなくても案件申請者に計画の修正を促すことは把握された.これは,法的拘束力がないからこそ,柔軟なシステムになっていると推測された. 我が国の景観審議会において案件のDRが実施されているが,法的拘束力がないことが問題であると指摘されることが多い.法的拘束力を持てば,強制力を持つが,私権の制限などの問題を解決することが難しいだろう.まずは,文書における根拠と具体的改善案の明示,徹底した情報公開によって,法的拘束力がなくても案件申請者に計画の修正を促すことを行うべきである.
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