2009 Fiscal Year Annual Research Report
小規模多機能型居宅介護併設の高齢者向け住宅の実態把握と建築計画的留意点の抽出
Project/Area Number |
21760493
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山口 健太郎 Kinki University, 理工学部, 講師 (60445046)
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Keywords | 小規模多機能型居宅介護 / 高齢者住宅 / 行動観察調査 |
Research Abstract |
本研究では、高齢者住宅に小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)を併設する効果および問題点について検討するために、兵庫県芦屋市にある施設おいて2つの調査を実施した。 (1) 小規模多機能による柔軟なケアの提供が入院患者の在宅復帰に及ぼす影響 小規模多機能の利用者の中から退院直後の2名(高齢者住宅居住者1名(要介護5)、在宅高齢者1名(要介護2))を取り上げ、対象者の居場所・介護・看護・医療内容を介護職員に記入してもらう職員アンケート調査を実施した。調査期間は退院から30日間である。その結果、両名とも退院直後は小規模多機能の宿泊を利用していたが、高齢者住宅の入居者は9日目に在宅復帰が可能となった。一方、在宅高齢者は退院後22日目に在宅復帰が可能となったが、数日後には再び小規模多機能の泊まりを利用していた。夜間(18時~翌6時)の介護内容をみると高齢者住宅には、排泄介助が2回、体位交換が2回と小規模多機能宿泊時と同等のケアがなされていたが、在宅の高齢者には夜間のケアが行われていなかった。 (2) 小規模多機能+高齢者住宅における日中の過ごし方 7時から19時の時間帯における小規模多機能の全利用者に対する行動観察調査を実施した。調査日数は8日間である。調査の結果、高齢者住宅入居者の小規模多機能内での過ごし方は、車いす上の生活が大半であり、他者との関わりはほとんど見られなかった。 以上の結果から小規模多機能を併設した高齢者住宅では、特別養護老人ホームなどの24時間体制の施設と同等のケアを提供することができ、入院後の早期在宅復帰を行いやすくなると考えられる。だが、日中は基本的な生活行為(食事、排泄、入浴)のみであり、外出などの行動は見られなかった。今後は、施設とは異なる「住宅」に居住することのメリットを検討していく必要があると考えられる。
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