2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期地方官舎に見る日本近代都市独立住宅の成立と展開に関する研究
Project/Area Number |
21760504
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
崎山 俊雄 Akita Prefectural University, システム科学技術学部, 助教 (50381330)
|
Keywords | 地方官舎 / 平面構成 / 供給制度 / 近代住宅 / 武士住宅 |
Research Abstract |
本研究は、戦前期日本における地方官舎(都道府県官舎)の展開過程を明らかにし、その建築史的意義について考察しようとするものである。平成21年度は、主として東日本地域の公立文書館等について史料の現存状況を調査し、その上で、特に明治期を通して一定の史料が現存していることが確認できた埼玉県を中心に、地域的なバランスも考慮して、北海道、秋田県、宮城県、福島県、群馬県、茨城県、神奈川に関して史料の収集を行った。その結果、明治初期には国庫負担で建設され、そのため大蔵省の強い統制下にあった地方官舎は、明治13年の地方税負担化を経て、またとりわけ明治10年代後半期以降に地方行財政制度が整えられていくのにしたがって、独自の展開を為したことが明らかになった。例えば埼玉県の官舎規則は、大蔵省が明治9年に定めた規則を補完すべく明治12年に制定されたものを端緒とするが、明治19年以降、これは県独自の規則に置き換えられていったことが知られた。同県はまた明治20年代には独自に、主として衛生面から官舎建築の改良も行っていた。また、特に明治末期には、地方が相互に官舎規則を参照しあうなど、中央(省)を介さない地方独自のネットワークの形成されていたことも確認された。これらは、これまで東京を中心として、また近代建築家・啓蒙家の論考を根拠として語られてきた日本近代住宅史に対して、新たな視点を与える事例であると評価できる。一方、これら官舎の平面構成に関しては、主として大正期から昭和戦前期に計画された複数の例(図面)について発見できた。平面は管轄主体によって様々であったが、近世江戸期以来の接客空間に対する配慮の上に、家族生活空間の充実化や合理的な動線計画への取り組みが見出される点では共通していたことが明らかになった。
|