2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代末から初期中世に至る教会堂建築の空間的展開-周歩廊の形成とその意味-
Project/Area Number |
21760509
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Research Institution | Kobe Shukugawa Gakuin University |
Principal Investigator |
高根沢 均 神戸夙川学院大学, 観光文化学部, 講師 (10454779)
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Keywords | 集中形式 / 周歩廊 / 再利用材 / 初期キリスト教建築 / 空間の機能 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、サンタ・マリア・マッジョーレ洗礼堂(ノチェーラ)の調査を実施した。 3月の調査ではポータブル・レーザー測距器の使用許可を取得して簡易実測を実施した結果、以下の考察を得た。 中央に洗礼槽をもつ身廊と周歩廊を区分する15組30本の二連環状列柱の柱間は、内側で約1.92m(1.86~1.97m)、外側で約2.26m(2.11~2.38m)であった。アプシス前はやや広く、内側が3.44m、外側が3.89mであった。各柱間の幅にみられる約10~27cmの差は、寸法の異なる再利用材を使用していることに起因すると考えられる。 また、身廊側列柱において、その他の柱間とアプシス前の柱間の比率は約1:1.8であり、列柱の位置が正十六角形ではないことを確認した。このことから、まず身廊中心とアプシスを結ぶ主軸線の延長が反対側の環状列柱の円と交差する位置に最初の円柱を配置し、そこから他の円柱をアプシス方向へほぼ等間隔で配置した、という仮説を得た。さらに、柱間と正対するように反対側に円柱が配置されており、周歩廊から柱間を通して身廊を見るとき、反対側の周歩廊(およびアプシス)は視界に入らない。したがって、必然的に視線は身廊におかれた洗礼槽に集中することになる。この配置は、身廊内の儀式に対して周歩廊にいる人々の意識をより焦点化するため意図的に行われたと考えられる。 上記のような特性は、環状列柱の配置において対称性と十字架形の交差軸線を意識したサント・ステファノ・ロトンド聖堂(ローマ)およびサンタンジェロ聖堂(ペルージャ)とは明らかに異なっている。今後、さらに精密な測量を実施し、スポリアの配置と空間構成について検討する。
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