2009 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産候補「長崎の教会建築」の保存継承に向けた道具・技術・組織に関する史的研究
Project/Area Number |
21760510
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
山田 由香里 Nagasaki Institute of Applied Science, 工学部, 准教授 (60454948)
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Keywords | 長崎の都会建築 / 鉄川与助 / 大工道具 / フランス人神父 / フランス製鉋 / 生産技術 / 新上五島町 / 鯨賓館ミュージアム |
Research Abstract |
新上五島町鯨賓館ミュージアム所蔵の鉄川与助使用の大工道具は全17点で、内13点が鉋、他に墨壺・留定規・柱面取見本・足踏式ロクロからなっていた。鉋はいずれも仕上げ用のもので、モールディング・柱の面取り・天井リブなどの箇所に使用され、確かに教会堂窪築に使われた道具であることが確認された。鉋のひとつに「MANUFACTURE FRANCAISE」の刻印があり、フランス製ものが1点含まれる、刃押えが木製である点もヨーロッパ技術の受容を示し、鉄川与助が教会堂建築の手ほどきを受けたフランス人神父の影響と考えられる。道具は、手づくりか既成品に手を加えたもので、教会堂建設にあたっての創意が窺えた。割れやゆがみが発生しても隠すことはせず、道具は用を足せればよいという鉄川の実直な考え方も窺えた。 同ミュージアムには弟子の前田喜八郎の道具も一式24点も収蔵され、昭和27年頃に長崎で教会堂修理の現場で使用したものである。こちらは伝統的な日本大工道具で、ヨーロッパ技術の影響は全くみられない。鉄川は教会堂の現場を弟子に任せたが、手取り教えるのではなく、各自の創意を伸ばす方針だったという。弟子と道具が異なる点に、こういった仕事の姿勢が表れている。 長崎県内で切石積みとして唯一の頭ヶ島天主堂に使用された石の石切場が、頭ヶ島・ロクロ島などに残っていることが確認された。使用の最も可能性の高い石切場は教会堂西側の海岸沿いで、幅45m、奥行20m、高さ10m以上の規模に及ぶ。鉄棒を上から突き入れて直径6cmの穴を作り出し、爆破させて石を割った痕跡も残る。船が着けやすく、広い平場が確保でき、作業に適していた。 近代の洋風建築に実際に使われた大工道具はほとんど残っておらず、鉄川与助の大工道具は技術受容を示す存在として大変貴重である。
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Research Products
(2 results)