Research Abstract |
ドーパントレベルは,半導体ではドナー及びアクセプタのイオン化レベル,3d遷移金属元素や希土類元素を添加した蛍光体や磁性半導体等では遷移金属・希土類元素ドーパントの酸化還元レベルとして,ドーパント由来の電気,光学,磁気特性を制御・設計する上で最も基本的な情報である.その重要性から,ドーパントレベルを実験的に計測するだけでなく,第一原理計算に基づいて予測する試みが古くからなされてきた.しかし,計算に用いられる電子相関の近似と計算モデルの制約により,定量的な評価がなされていない.本研究では,これらの問題を克服し,半導体及び絶縁体中のドーパントレベルを,第一原理計算に基づいて定量的に評価する手法を確立することを目的とする.また,第一原理に基づいたフォノン計算を行い,格子振動の効果を取り入れることで,実験値と直接対応づけられるような,有限温度下でのドーパント特性を予測する.さらに,この手法を機能性酸化物・窒化物中の様々なドーパントに適用し,ドーパント由来の機能の設計に応用することを目指す. 平成21年度には,希薄極限でのドーパントレベルを定量的に評価する手法を確立するため,電子構造が比較的シンプルな半導体であるSi,C,BN,ZnOを対象として,ハイブリッド密度汎関数法による電子状態の再現性の向上と大規模計算に基づいた欠陥間相互作用のモデル化を行った.欠陥間相互作用のモデル化については,数種類のサイズのスーパーセルについて系統的な計算を行い,欠陥間の静電相互作用を多極子展開した結果にフィッティングすることで,欠陥間距離の関数として定式化した.これは,過去に提案されている手法に基づいているが,欠陥の電子状態に応じて,静電相互作用に寄与する正味の欠陥電荷を用いるなど,修正が必要であることが判明した.このため,欠陥の電子状態の分布を詳細に調べ,各状態に応じた補正法を検討した.
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