2010 Fiscal Year Annual Research Report
分極処理による低LTD型生体活性イットリア安定化ジルコニアの開発
Project/Area Number |
21760528
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 優実 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00436619)
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Keywords | イットリア安定化正方晶ジルコニア / バイオセラミックス / 酸化物イオン伝導 / 分極 / エレクトレット / 低温劣化 / アルカリ処理 / 骨類似アパタイト |
Research Abstract |
イットリア安定化正方晶ジルコニア(Y-TZP)は、優れた強度と生体親和性により医療に欠かせない材料となっている。しかし、湿潤環境下において、単斜晶への相転移を経て亀裂が発生、破壊に至る現象(低温劣化;LTD)が発生することから、埋入期間が長期にわたるようなインプラント材料としての信頼性は低い。LTDの発生機構は完全には解明されていないものの、水の静電吸着を起点として生成する表面OH^-イオンが内部に拡散してゆく過程で進行するとの説が有力となっている。そこで本研究では、Y-TZPを直流電界処理し、負電荷を持つO^<2->イオンを陽極側に、正電荷を持つO^<2->イオン欠陥を陰極側に誘導して局在化させる(以降、前者をN面、後者をP面と表記)、すなわち帯電表面を作り出すことによりLTDの抑制が可能であるかを検証した。 Y-TZPセラミックスディスク(Y_2O_3=3mol%、φ8mm×2mm)を、200℃、250Vcm^<-1>で5~480分間処理することで、処理前の結晶構造を保持しつつ帯電強度が異なる表面(電荷密度1~100mCcm^<-2>を作成することに成功した。非電帯および帯電試料をそれぞれ100℃の沸騰水に7日間保持して加速的にLTDを発生させた後、その進行を単斜晶転移率として見積もったところ、帯電強度によらず、P面は非帯電面とほぼ同程度に相当する40~50%、N面はこれより有意に小さい3~8%という値を示し、N面上において明白な相転移抑制効果が現れた。前述のように、LTDの進行は水の静電吸着と表面OH^-イオンの生成、およびその内部への拡散といった複数の段階を経て進行するとされている。N面側においてLTDの進行が鈍化したのは、過剰な酸化物イオンが形成する負電荷によってOH^-イオンの内部拡散が抑制されたためであると考えられる。
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