2009 Fiscal Year Annual Research Report
有機相の変形特性に着目したアワビ貝殻の強度・靱性両立機構の解明
Project/Area Number |
21760542
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
垣澤 英樹 National Institute for Materials Science, ハイブリッド材料センター, 主任研究員 (30354137)
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Keywords | 貝殻真珠層 / 高靭化機構 / 有機相 |
Research Abstract |
有機相の状態を変化させた真珠層を得るため、日本近海産のアワビの貝殻真珠層を用い、(a)有機相の粘弾性的挙動の効果を消失させた材料、(b)有機相の体積膨張、粘弾性的挙動の効果を消失させた材料、(c)有機相のすべての効果を消失させた材料を得る方法を検討した。(a)-(c)それぞれの条件を満たすため、(a)液体窒素下で凍結、(b)室温で乾燥、の手法を行い、片側切欠き試験片の引張破壊試験を行った。(a)、(b)の材料ともに線形的な破壊挙動を示した。破面を観察した結果、(a)の材料は炭酸カルシウム相内を亀裂が直線的に進行したことがわかった。一方、(b)の材料は、炭酸カルシウム相の積層プレートのつなぎ目で破壊が生じていた。(c)については、有機相の熱分解を試みた。炭酸カルシウム相のCaOへの熱分解および相変態を抑制するため、熱重量分析によって加熱条件を検討した結果、CO2雰囲気下で加熱することにより炭酸カルシウム相の熱分解開始温度を虹雰囲気に比べて200K以上上昇させることを見出した。アラゴナイトからカルサイトへの相変態温度以下で、CO2雰囲気下で加熱することにより、炭酸カルシウム相を変化させず有機相を除去することに成功した。片側切欠き試験片の引張破壊試験の結果、有機相を除去した材料は積層プレート間で剥離が生じることによって破壊した。有機相が本来の働きを発揮できる湿潤な状態では、最大荷重前から非線形な挙動が観察され、最大荷重後も荷重を負担した後破壊した。以上のように、有機相の状態を変えることによってマクロな破壊挙動が変化することを確認した。
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