2010 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファス酸化物の結晶化に伴うナノポーラス化と現象解明
Project/Area Number |
21760556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲村 龍介 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (70396513)
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Keywords | アモルファス / 酸化物 / ナノポーラス / TEM / 動径分布関数 / HAADF-STEM |
Research Abstract |
真空蒸着法およびスパッタリング法によりアモルファスAl_2O_3,WO_3,TiO_2およびCr_2O_3薄膜を作製し,アニールに伴うボイドの形成挙動を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。結晶に比べて20~30%密度が低いアモルファスAl_2O_3およびWO_3を大気中でアニールすると,結晶化前にボイドが生成し,γAl_2O_3および単斜晶型WO_3への結晶化に伴ってボイドの成長が起こるという共通する特徴が見出された,一方,アモルファスと結晶間の密度差が2%程度のアモルファスTiO_2およびCr_2O_3薄膜をアニールしても結晶化後にボイドは形成されなかった.アモルファス酸化物の結晶化に伴うボイド形成が起こるためには,アモルファスと結晶間に大きな密度差が必要であることが明らかとなった. 抵抗加熱により作製したアモルファスAl_2O_3薄膜においては、電子ビーム蒸着により作製したAl_2O_3に比べて、生成するボイド径は大きく,ボイド形成が促進された。抵抗加熱Al_2O_3薄膜には、加熱に用いたWヒーターから10at%程度のWが混入されていた。HAADF-STEM観察により、蒸着後の抵抗加熱Al_2O_3薄膜中に1nm以下のWクラスターが存在することがわかった。また,アニールによってWクラスターは消滅し,W原子としてAl_2O_3マトリックスへ固溶することを示す結果が得られた。さらに、抵抗加熱および電子ビーム蒸着Al_2O_3の電子回折像を解析して得られた動径分布関数を評価したところ,両者には明瞭な違いが認められた.0.18nm付近のボンド長分布を見ると,抵抗加熱蒸着膜のほうが,ピーク強度は低く,長距離側へブロードに分布する.Wの導入により多様な原子結合が形成され構造の不均一性が増大していることが示唆され,これがボイド形成挙動の違いをもたらしたと考えられる.第3元素としてのWが、アモルファス構造の変化を引き起こし,それがボイド形成の促進に寄与することが新たな知見として得られた。
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