2010 Fiscal Year Annual Research Report
き裂の形成と進展過程を考慮した粒界制御による面心立方金属材料の疲労特性向上
Project/Area Number |
21760560
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Research Institution | Ashikaga Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 重昭 足利工業大学, 工学部, 准教授 (00323931)
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Keywords | 疲労特性 / 疲労破壊 / 疲労き裂進展 / オーステナイト系ステンレス鋼 / アルミニウム合金 / 加工熱処理 / 結晶粒界 / 粒界工学 |
Research Abstract |
面心立方金属材料の疲労破壊過程において重要な役割を担う結晶粒界(以下、粒界と記す)に着目し、粒界の性格・構造がき裂の形成および進展に及ぼす影響を明らかにし、さらにその知見に基づいた粒界設計制御による疲労特性向上の可能性を調べた。本研究では、低積層欠陥エネルギー材料のSUS304オーステナイト系ステンレス鋼および高積層欠陥エネルギー材料の6061アルミニウム合金を試験片として用いた。本年度は、疲労き裂進展に及ぼす粒界微細組織の影響を明らかにすることとした。SUS304ステンレス鋼のコンパクトタイプ(CT)試験片を作製し、き裂進展速度の局所的変化に及ぼす粒界の影響を調べた。疲労き裂が結晶粒界を横切るとき、結晶粒内に比べて進展速度大きく低下することが明らかになった。さらに、高エネルギー粒界のランダム粒界に沿ってき裂が進展する場合、結晶粒内に比べき裂進展速度が大きくなるのに対して、低エネルギー粒界の低Σ対応粒界に沿ってき裂進展する場合には進展速度が著しく減少することが明らかになった。さらに、6061合金に対しては、粒界が、疲労き裂進展の優先的経路となることを明らかにするとともに、材料に高頻度の低Σ対応粒界を導入する粒界制御を行うことによって、疲労限および疲労寿命を増加できることを明らかにした。疲労き裂形成およびき裂進展に及ぼす粒界性格・構造の影響から、面心立方金属材料における疲労破壊の抑制は、低Σ対応粒界の存在頻度を増加させる粒界制御によって可能であると結論付けられた。以上の結果は、面心立方金属材料の疲労特性向上に対して、粒界工学に基づく新たな材料プロセスの有効性を示すものであり、今後、構造材料の高性能化に関する幅広い応用が期待できるものと考える。
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