2011 Fiscal Year Annual Research Report
チタン合金の高サイクル疲労特性に及ぼす双晶変形の影響
Project/Area Number |
21760567
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小野 嘉則 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料信頼性評価ユニット, 主任研究員 (90354240)
|
Keywords | チタン合金 / 高サイクル疲労 / 破壊 / 双晶変形 / 極低温 |
Research Abstract |
本研究の目的は、低温用αチタン合金の疲労強度設計の最適化とその妥当性を検証するための余寿命評価法について検討することにある。研究代表者らは、これまでにTi-5% Al-2.5%SnELI合金鍛造材の引張特性と高サイクル疲労特性の室温以下での温度依存性を調査し、低温では静的強度(0.2%耐力、引張強度)は高くなるにもかかわらず、高サイクル疲労強度は低くなることを明らかにしている。疲労破壊起点部の方位解析や組織観察により、低温での高サイクル疲労強度の低下は双晶変形に起因していることが示唆された。 本年度は、低温(77K)での引張試験あるいは疲労試験によって変形双晶を導入した後、室温にて荷重制御での疲労試験を行った。その結果、低温での損傷(変形双晶)は、室温での試験で検出できることが示唆された。ただし、本研究で対象としている双晶が非常に薄いため、観察する上では現状TEMによる観察を行わざるを得ない。そのため広範囲にわたる観察ができておらず、双晶量の定量的評価ができていない。この点は、余寿命評価法を確立する上で今後早急に解決したい課題である。 一方、本年度は、本研究で主たる損傷と考える双晶について、その形成が抑制されると考えられる細粒材の低温での疲労特性の評価も行った。その結果、細粒材(平均粒径30μm)では、室温での疲労特性は粗粒材(本研究供試材,平均粒径80μm)とほぼ同程度であるものの、低温では粗粒材に比べて疲労特性が顕著に改善されることが判明した。低温で疲労破壊した細粒材の起点部(ファセット)の面方位を解析したところ、底面であることが確認された。この結果より、細粒材では、低温での双晶変形に伴ったき裂発生が抑制され、その結果疲労特性が改善されることが推察された。また、この結果は、本研究供試材の繰り返し荷重下において、双晶変形が主たる損傷因子となっていることを裏付けるものと考えられる。
|