2009 Fiscal Year Annual Research Report
グラフト重合法による共役型水素ネットワークの設計と無加湿型燃料電池膜への応用
Project/Area Number |
21760569
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
榎本 一之 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 博士研究員 (50465978)
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Keywords | 燃料電池 / 電解質膜 / 無加湿 / 放射線グラフト重合 / 水素結合ネソトワーク |
Research Abstract |
燃料電池開発において、水の存在なしに高イオン伝導度を示す無加湿型電解質膜を開発できれば、高温作動用燃料電池の普及のための大きなブレークスルーとなる。本研究では、有機合成技術により、水分子と類似の共役型水素結合ネットワークでプロトン移動が可能なプロトン伝導モノマーを設計・合成し、放射線グラフト重合により、スルホン酸を有するプロトン供与性モノマーと共グラフト鎖として高耐久性の高分子基材膜に導入した無加湿型電解質膜を作製することを目的とする。平成21年度は、フッ素系高分子膜にイオン伝導を担うスルホン酸と水酸基及びカルボキシル基を併せ持つグラフト鎖を導入した電解質膜を作製し、その導電率の相対湿度依存性を評価した。 エチレンテトラフルオロエチレン共重合体膜に、前駆体であるビニル酢酸及びアクリル酸エステルをグラフト重合後、アルキル求電子置換反応及び環状スルトンの開環付加反応により、水酸基及びカルボキシル基を併せ持つアルキルスルホン酸グラフト鎖を合成した。その中で、スルホン酸グラフト鎖に水酸基を導入した電解質膜(イオン交換容量IEC=1.15mmolg^<-1>、以後カッコ内はIECを示す)の80℃、30%RH下における導電率は、8.8xlO^<-4>Scm^<-1>を示した。グラフト率をあげることで高IEC膜(1.86)を作製したところ、機械強度48MPaを維持したまま、導電率3.8xlO^<-3>Scm^<-1>に達した。この値は、Nafion膜の導電率に匹敵する。上記合成した電解質膜は、低加湿下でのイオン伝導性向上に効果のあることが確認できた。本年度の検討により、低加湿下で高導電性を示したグラフト型電解質膜に、共役型水素結合ネットワークでプロトン移動が可能なプロトン伝導モノマーを組み合わせることで、無加湿下で高イオン伝導度を示す電解質膜の実現を次年度目指す。
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