Research Abstract |
フェムトパルスレーザー光を光の回折限界まで強く集光することで焦点付近において極めて強い光の場を形成することができる.研究代表者は,この非平衡な超高強度光反応場を各種金属イオンを含む溶液体中に形成し,非線形光学効果により発生する溶媒分子のラジカルによる還元反応を介して,シングルナノメートルオーダーの金属粒子が生成されることを実証した.本研究では,対象を二種類以上のイオンを含む混合溶液へと拡張することで,合金粒子ならびに酸化物と金属から成る新しいハイブリッド粒子の創成を目的とし研究を行ってきた.その結果,金ならびに銀イオンを含む溶液への高強度レーザー照射により,溶液中に含まれるイオンの混合比を変えるだけで組成を制御した金-銀合金ナノ粒子を作製できることを明らかにした(Y.Herbani,T.Nakamura,S.Sato,Jounal of Nanomaterials,(2010)154210-1-9).この結果は,複数種の金属イオンを含む水溶液への高強度レーザー照射により,還元剤などの化学物質や反応時の設定温度変化など複雑なプロセスを経ることなく,所望する組成の合金ナノ粒子を極めて容易に作製することができることを示唆しており,今後その研究範囲を三元系をはじめとした多元系合金ナノ粒子の作製に拡張する予定である.一方,酸化物・金属ハイブリッドナノ粒子の作製については,同手法を用いた酸化物ナノ粒子の作製に関する研究過程において,「卑」な金属イオンが安定に存在する水溶液が必要であることが分かった.現在のところ,塩化亜鉛水溶液と塩化白金水溶液を所定の割合で混合した混合水溶液へのレーザー照射により,酸化亜鉛と金のハイブリッドナノ粒子の作製を示唆する結果が得られており,引き続き反応メカニズムの解明を含めた詳細な検討を行っていく予定である.
|