Research Abstract |
本研究では,高温加圧加工法による共有結合性単結晶の高温塑性変形機構を材料学的・応力解析的見地から解明し,さまざまな可能性を秘めた革新的X線集光・分光ミラーへの応用を試みることを目的として研究を進め,平成22年度は以下の成果を得た. 非走査・波長分散型X線分光分析を可能とする分光結晶の開発: 特性・蛍光X線分光分析は,試料に含有される元素の同定・分布評価,化学的状態の把握等,現在の材料研究・開発現場で広く用いられている.平板分光結晶を用いた波長分散型分光分析は,エネルギー分解能が優れる一方で,精密な駆動系と極めて長い測定時間を要した.本研究では,試料からの特性X線を,試料に面直に配置したCCD検出面の異なる位置に波長毎に集光させうる非走査型分光結晶を開発した. 具体的には,(1)Ge(110)基板を用いて,Bragg角18~25゜(Ni,Cu,Zn,Ge,Gaに相当)の蛍光X線を,結晶の曲率半径が28~50mmで連続的に変化し,その曲率円自体も連続的に傾いていくという曲率傾斜形状を新たに設計した.(2)高温加圧加工法を用い,Geの融点近傍温度にて結晶性を維持したまま設計形状への変形を行った結果,複雑形状においても設計どおりの形状へと基板を変形させることに成功した.(3)合金試料(上記5元素含有)にX線を照射,点光源として放出される蛍光X線を,試料に対して面直に配置したX線CCDを用いて評価した結果,波長毎の分光・集光を示しており,各元素のK_<α1>・K_<α2>線も明瞭に分離されていた.エネルギー分解能は9~14eVと評価され,平板結晶を用いた通常の波長分散方式と遜色ない結果を得た.これにより,当初目標であった「検出器上への波長毎の厳密な集光というコンセプトの実証」は達成された.また,本結果はCCDを用いたリアルタイムでの分光分析の可能性を示すとともに,特性X線の結像点を任意に制御可能であることを示すものである.
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