Research Abstract |
我々が新たに提案したコーティング手法(PPA法:パルスプラズマアブレーション法)を用いたDLC成膜では,パルスアークプラズマの電子密度や極板間からのプラズマの排出速度が膜質に大きな影響を及ぼす.それらのプラズマパラメータは,主としてキャパシタの充電電圧,キャパシタの静電容量,チャンバー圧力,などの装置運転パラメータに依存して変化する.また過度のフッ素の含有による膜質の軟化(硬度が10Gp未満となる)が起きやすいことも報告されていた.そこで,パルスアークプラズマの電子密度とプラズマ排出速度を計測し,装置運転パラメータとの関係を明らかにすることを試みた.また,硬質化が可能な手法を提案することをもうひとつの目標とした.実験の結果,電子密度とプラズマ排出速度の計測については十分な精度を持った測定手法を確立することが出来ず,次年度も継続的に研究を行うこととした.一方,硬質化手法の提案については有効な手法を見出し,特許出願,学会発表を行った.具体的には,DLCの膜質にチャンバー雰囲気中の微量水分の存在が大きく影響することを明らかにし,特に平均自由行程がPPAガン部と基板との距離に満たない程度の微量の水分添加により,DLC膜が硬質化することを見出した.例えば,ベースプレッシャーが1.0×10^<-5>Torr程度のチャンバー内で,PTFEをアブレーション源とし,タングステン電極間距離10mm,周波数8Hz,1回の放電トのエネルギー1.5J(コンデンサのキャパシタンス3μF,充電電圧1kV)のアーク放電条件で,40mm離れたSUS基板に対して,66000回の放電を行ってDLCを成膜したところ,水分を点火しない場合の硬度が5.7GPaであったのに対し,水分を分圧で5.0×10^<-4>だけ添加した場合Cの硬度は10.4GPaであった.
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