Research Abstract |
本研究では,高密度プラズマによる細穴内面へのDLC成膜を目的として,PPA法(パルスプラズマアブレーション法)で生成される高密度プラズマ流を細穴内面に進入させることにより,細穴内面への均一なDLC成膜を行うことを検討した。その結果,内面の開口端から進入するプラズマは軸方向に不均一な分布となるため,そのような不均一分布プラズマを用いても,軸方向に均一な成膜が行える条件・手法の確立が最重要であることが分かった.そこで我々は,(1)成膜対象となる内面に成膜原料ガスを均一に分布させておき,(2)内面に高密度プラズマを進入または生成し,(3)内面の原料ガスを同プラズマによって枯渇し,(4)内面のガス分布が拡散によって均一になるまで待つ((2)(3)(4)を繰り返す),というシーケンス(以下:繰り返し枯渇シーケンス)の適用可能性を検証することとした.そこで,本シーケンスを1/4インチステンレス鋼パイプ(内径4.4mm,長さ50mm)内面へのDLC成膜に適用することとし,拡散方程式を解くことによって原料ガスが内面で均一になる時間を約100msと求め,上記(4)の工程での待ち時間が約100msとなるようにシーケンスを設定した.そのような条件下で成膜されたDLC膜の膜厚,硬度,ラマンスペクトルは軸方向に均一であった(ばらつきは±15%程度),また,軸方向の3点(中央及び両開口端付近)で計測した摩擦係数は平均で0.167となり,そのばらつきは±27%程度であった.摩擦係数のばらつきは,膜厚や物性のばらつきよりも大きかったが,繰り返し枯渇シーケンスを採用しない場合(待ち時間~数ms)では,3点で計測した平均摩擦係数が0.357(ばらつきは±40%)であったため,その結果と比較すると,繰り返し枯渇シーケンスを採用することで,大幅な均一化が達成された.
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