Research Abstract |
本課題では人工亜鉛さび粒子の生成機構,構造,形態とさび層の緻密性,反応性,安定性,保護性の関係をナノ-ミクロ-マクロレベルで明らかにし,これらの相関を定性・定量的に解明すること目的とする。そこで,平成21年度は,人工亜鉛さびの調製と物性の調査を中心に,以下のような検討を行った。 (1) 人工亜鉛さびZinc Hydroxynirate(Zn_5(OH)_8(NO_3)_2・H_2O:ZHN)の調製と分子吸着特性の解明 Cl^-やSO_x環境下での人工亜鉛さびに関する研究は広く行われているが,NO_x環境下についてはほとんど検討されていない。ZHNはZn(NO_3)_2水溶液中でZnOを6-140℃で加水分解すると生成した。調製したZHNは六角板状粒子で,高い水,CO_2分子選択吸着性を有し,これらはZHNの結晶性と高い相関が見られた。 (2) 人工亜鉛さび粒子の生成に及ぼすアニオンの影響 これまでの研究から,Cl^-,SO_x,NO_x環境下ではそれぞれZinc Hydroxychloride(Zn_5(OH)_8Cl_2・2H_2O:ZHC),Zinc Hydroxysulfate(Zn_5SO_4(OH)_6・nH_2O:ZHS),ZHNが生成すると明らかになった。そこで実環境のシミュレーションとして,複数のアニオン(Cl^-,SO_4^<2->,NO_3^-)存在下で人工亜鉛さび粒子の調製を行った。生成物はいずれも層状塩基性亜鉛塩でSO_4^<2->存在下ではZHSが,存在しないとZHCが主に生成した。これらの結果は実環境下で生成する亜鉛さび種とほぼ一致した。 (3) 鋼材さびβ-FeOOHの生成に対するZn(II)および人工亜鉛さびZnO,ZHCの影響 Cl^-環境下での亜鉛処理鋼材の腐食後期では,Zn(II)や亜鉛さび存在下で鋼材は腐食し,β-FeOOH粒子が生成する。そこで,β-FeOOHの生成に対するZn(II)および亜鉛さびの影響を調べた。β-FeOOHの結晶性,粒子サイズはZnO,ZHCの添加により急激に低下したが,Zn(II)では大きな影響は見られなかった。 (4) 人工亜鉛さびZHCの構造と性質に対する熱処理の影響 亜鉛処理鋼材に生成した亜鉛さびは日照により高温になる。そこで,ZHC粒子を種々の温度で処理し,その構造と性質を調べた。ZHCは150℃でZnOおよびβ-Zn(OH)Clに分解し,さらに225℃以上ではZnOのみになった。水およびCO_2分子選択吸着性は,熱処理によるZHCの結晶性の低下と高い相関が認められた。
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