Research Abstract |
本課題では人工亜鉛さび粒子の生成機構,構造,形態とさび層の緻密性,反応性,安定性,保護性の関係をナノーミクローマクロレベルで明らかにし,これらの相関の定性・定量的な解明を目的とする。平成22年度は,金属添加人工亜鉛さびの調製と物性の調査を中心に,以下の検計を行った。 (1)人工亜鉛さびZinc Hydroxychloride (Zn_5(OH)_8Cl・H_2O : ZHC)の生成に及ぼすTi(IV)および熟成温度の影響 亜鉛処理鋼材の亜鉛被膜にTi,Al,Mgなどを微量に合金化すると鋼材の耐食性が向上する。そこで様々な熟成温度でTi(IV)添加ZHC(Ti-ZHC)を調製し,その構造と物性を調べた。ZHCの結晶性はTi(IV)添加により低下し,粒子は微細化した。その影響は熟成温度の上昇により顕著になったが,実環境温度の6-30℃でも見られた。また,水やCO_2の吸着も抑制された。よって,Tiを合金化した亜鉛処理鋼材では微細なさび粒子層が鋼材表面に生成するため,腐食寄与気体に対する保護効果を発揮することが示唆される。 (2)人工亜鉛さびZinc Hydroxysulfate (Zn_5SO_4(OH)_6・nH_2O : ZHS)の生成に対するFe(II)およびFe(III)の影響 亜鉛処理鋼材の腐食が進行すると,鋼材の露呈によりFe(II)が溶出し,さらに酸化しFe(III)が生成する。そこでFe(II),Fe(III)存在下で人工亜鉛さびZHSを合成し,生成物の構造と性質を調べた。Fe(II),Fe(III)を添加するとZHSの結晶性,粒子サイズ,CO_2やSO_2吸着能は減少し,その効果はFe(III)>Fe(II)であった。以上より,SO_x環境下での亜鉛処理鋼材の腐食後期では,微細なさび粒子層が鋼材表面に生成するため,腐食寄与気体に対する保護効果を発揮することが示唆される。 (3)Fe(II)から合成した人工鉄さびβ-FeOOHの生成に対するZn(II)および人工亜鉛さびZnO,ZHCの影響 Cl^-環境下での亜鉛処理鋼材の腐食後期では,Zn(II)や亜鉛さび存在下で鋼材は腐食し,Fe(II)が溶出し,Green Rustを経由してβ-FeOOH粒子が生成する。そこで,Fe(II)から調製したβ-FeOOHの生成に対するZn(II)および亜鉛さびの影響を調べた。β-FeOOHの結晶性,粒子サイズ,腐食寄与分子であるCO_2やSO_2吸着能はZn(II),ZnO,ZHCの添加により低下し,その効果はZHC≒ZnO>Zn(II)であった。
|