2010 Fiscal Year Annual Research Report
水環境維持に用いる浄水用中空糸膜作製における膜強度発現プロセスの独創的検討
Project/Area Number |
21760608
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大向 吉景 神戸大学, 大学院・工学研究科, 特命助教 (20513542)
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Keywords | 高分子膜 / 非溶媒誘起相分離法 / 固化速度 |
Research Abstract |
実際の膜作製プロセスでは生産速度は高分子溶液の固化速度に依存しており、より高速で作製して効率を向上するためには、固化過程の解析と改善が不可欠である。本研究では、非溶媒誘起相分離法における高分子溶液の固化過程に焦点を当てて検討を行った。強度測定装置を用いて直接的に相分離過程の膜の強度を測定することができ、凝固液と高分子溶液が接した後の強度発現の経時変化を検討することができた。その結果、凝固液と接した数秒後から強度の発現が開始されていることから膜の構造形成メカニズムは凝固液と接した高分子溶液の最表面は薄くすぐに膜が形成され、その後中に水が浸入し相分離が引き続き誘起されていくことで内部の構造も固化されるとわかった。これは、膜の厚さ方向全体で判断する光散乱装置では得られなかった知見である。さらに、この強度測定装置を用いることで膜の強度発現の因子を明らかにした。(1)凝固浴の組成を変化させることから得られた非溶媒と溶媒の交換速度,(2)高分子濃度を変化させることから得られた平衡が移動することによる強度発現の促進,(3)高分子の分子量を変化させることから得られた粘度の影響,(4)親水性の添加剤を添加することから得られた膜の親水性の影響の4つである。その中で最も効果が高いのが、親水性添加剤の付与であった。そして今回得られた知見をもとに中空糸膜を紡糸した結果、添加剤を添加することで、実際に膜の紡糸を促進させる効果が得られた。 また、熱誘起相分離法における構造形成過程のシミュレーションを実施した。凝固浴温度が低いほど構造の固定が速くなり、また急速に冷却し、高分子濃度,分子量等の条件を整えることで孔の成長を抑制でき熱誘起相分離法によるナノろ過膜作製の可能性を示した。
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