Research Abstract |
前年度に,親水/疎水の表面被覆層を有する新規な構造の磁性ナノビーズを設計し,実際に作製することに成功した.そこで今年度は,このビーズを利用して研究を進めた.酵素を埋包し,有機溶媒中で高い酵素活性を発現させることを検討し,ナノビーズの最適な構造や酵素固定化法などを様々な条件を検証した.その結果,表面の化学修飾は,酵素が存在できる空間を確保しつつ,適切な密度で表面修飾することで,より多くの酵素を固定化させることが分かった.また,酵素を固定化するには有機溶媒と水溶媒の二相系を用い,酵素を水溶媒に分散させつつ,粒子を有機溶媒に分散させて,酵素を取り込むことが重要であることを見いだした.このようにして作製した酵素複合化ナノビーズを用いて,有機溶媒中での酵素活性を調べた.その結果,クロロホルム中に浸した後も酵素活性を示し,18時間経過後も失活しないことが分かった.以上のようにして,有機溶媒でも酵素活性を発現するビーズを作製することに初めて成功したさらに,構造設計の最適化を進め,中央が親水性の高分子ゲルからなる粒子も作製し,有機溶媒中での酵素活性を発現させることに成功した.さらに,流通式反応器への適用も検討した.圧力損失を防ぐために担体の形状は,球状の代わりにファイバー状のナノ構造体を利用した.銀やカーボンのファイバー状ナノ構造体を合成し,表面を化学修飾することにも成功した. 以上のように,酵素を有機溶媒中で利用するための新しい方法論を構築した.酵素は生体由来の優れた触媒であり,本研究のようにして,簡便に酵素を有機溶媒中での反応に転用できれば,多くの化学反応に酵素を活用できることにつながり,これは学術的に意義深く,かつ工学的にも重要な知見であると考える
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