2010 Fiscal Year Annual Research Report
機能集積した層状複塩基性塩の層間を利用する新規不均一系キラル触媒の開発
Project/Area Number |
21760623
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
原 孝佳 千葉大学, 大学院・工学研究科, 助教 (60437358)
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Keywords | 層状粘土化合物 / パラジウム / アルコール酸化反応 / グリーンケミストリー / 不斉合成触媒 / アミノ酸錯体 |
Research Abstract |
"環境にやさしいモノづくり"を実現する物質変換プロセスを構築するためには、多様な機能を集積した新世代の固体触媒の開発が必要不可欠である。本申請研究では、層状粘土化合物の層間を規制されたナノサイズの反応空間として捉え、担体として無機化合物そのものに反応基質の活性化能を集積した固体不斉触媒を開発することを目的とした。 本申請研究では、PdとD-Valineが1:1で錯化したアニオン性[Pd(D-Val)Cl_2]^-錯体を、アニオン交換性層状粘士化合物であるNi-Zn複塩基性塩(NiZn)層間内にインターカレーションすることにより、[Pd(D-Val)(OH)_2]種をNiZn層間内に創成した。NiZn層間内には、長鎖アルキル基を有するカルボン酸アニオンやPO_4^<3->等の多価アニオンも同時にインターカレーションできる事も見出した。開発した[Pd(D-Val)(OH)_2]^-/PO_4^<3->/NiZn触媒は、不活性化アルコールである2-アダマンタノールの2-アダマンタノンへの酸化的脱水素反応に有効であり、空気中の酸素分子を酸化剤とする物質変換を可能とした。我々が先に開発した[Pd(OH)_4]^<2->/CH_3COO^-/NiZn触媒では、同様の反応条件で生成物は得られなかった事から、NiZnマトリックスに触媒活性種および基質活性化能が付与できたものと考えられる。また、1-フェニルエタノールの酸化的脱水素反応にても極めて有効であり、Pd基準のターンオーバー数(TON)は2,000に達したことから、層状複塩基性塩の層間内で発現する強い静電相互作用により、Pd(II)種の失活が抑制できたものと考えらえる。得られた触媒のPd周辺の微細構造は、高エネルギー加速器研究機構で放射光を利用したPdK殻X線吸収微細構造解析にて明らかにした。D-Valine以外のアミノ酸であるalanineやphenylalanine、prolineやcycteineも同様の触媒設計に用いたが、触媒活性の発現すら見られなかった。D-valine骨格に種々の官能基を導入し、Pd種近傍の立体制御を精密に行い、2級アルコールの速度論的光学分割反応に応用する必要がある。
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