2009 Fiscal Year Annual Research Report
母関数を用いた宇宙機の非線形軌道最適化問題の効率解法
Project/Area Number |
21760650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂東 麻衣 Kyoto University, 生存圏研究所, 研究員 (40512041)
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Keywords | 正準変換 / ハミルトン・ヤコビ方程式 / 軌道制御 |
Research Abstract |
宇宙機の軌道近傍の複数のデブリやPHA(地球接近小惑星)を観測するミッションを考えた場合、一台の宇宙機で複数の軌道上をまわるほうが経済的である。宇宙機の軌道近傍には複数のデブリや小惑星が存在すると考えられるが、これまでの軌道制御の研究では、一台の宇宙機による複数の軌道へのフライバイを扱う研究例は少ない。この問題は、膨大な数の対象の中から、どの対象に、いつ、どのように行くかを決定する複雑な最適化問題である。本研究では、母関数を用いたインパルス制御による宇宙機の非線形軌道最適化のアルゴリズムと複数フライバイ問題の新しい解法を提案した。宇宙機の運動は変分原理によりハミルトン系と呼ばれる運動方程式により記述される。ハミルトン系の構造を保つ座標変換は正準変換と呼ばれ、Hamilton-Jacobi方程式と呼ばれる偏微分方程式により特徴づけられる。近年Scheeresらにより提案された軌道最適化理論では、直接、最適解を求めるのではなく、正準変換の理論を用いて、最適化問題の解を生成する母関数を求める。そうすることにより、必要な制御量が、初期位置、目標位置および時刻をパラメータとする関数として得られる。つまり、対象とするハミルトン系の母関数を一度求めておけば、あとは各問題で異なる初期条件等のパラメータを代入するだけで解を得ることができる。このため本研究では、母関数を得るための具体的なアルゴリズムとして、Chebyshev多項式を用いたHamilton-Jacobi方程式の近似計算法を提案し、より広い範囲での解が得られることを示し、数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認した。さらに、母関数を用いることにより、解析的にインパルス制御による複数フライバイの総速度変化量を表すことができることに着目したアルゴリズムを提案した。
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