Research Abstract |
核融合炉への固体水系を用いた燃料供給法を確立すべく,固体水素の溶発素過程を調べることを目的として,イメージングファイバを用いた高速イメージング分光計測を開発した。この手法により,固体水素の溶発によって形成される高密度プラズマ塊の内部分布計測が可能となった。当該年度の主な成果は以下の通りである。 1.高速分光計測には5分岐されたイメージングファイバに異なる狭帯域光学フィルタを取り付けて高密度プラズマ塊からの発光を分光している。高密度プラズマ塊の内部分布を同定するためには,各フィルタを通して観測された発光の強度比を求める必要がある。これまでの計測システムではフィルタは固定式になっており,観測視線の同定を正確に行うことができなかった。そこで,フィルタを取り外し可能な圧空式の機構とし,遠隔操作を行える計測システムを構築した。 2.これまでの計測システムでは,高密度プラズマ塊のイメージが約30ピクセルで,詳細な空間分解能を得るには不十分であった。そこで,リレーレンズの倍率を大きくした結果,空間分解能が約3倍増加した。また,高密度プラズマ塊からの発光スペクトルの同定を詳細に行うため,バルマーβ線と連続スペクトルに加え,バルマーγ線にも着目して解析を進めた。今後,リレーレンズの倍率の最適化を行うほか,発光スペクトルの詳細な物理理解を准める予定である。 3.高密度プラズマ塊の電子密度の時間発展を調べたところ,磁力線方向に沿って20-30cmほど拡がり,電子密度分布が変化しつつ拡散していることが分かった。また,各溶発位置における電子密度分布から,背景プラズマの違いにおける高密度プラズマ塊内の電子(プロトン)数を比較したところ,高温プラズマに溶発する方が高密度プラズマ塊に内在する電子数は多いことが分かった。このことは,高温プラズマに入射する方がペレット溶発率が高いことと理論的に一致する。今後,内部分布を詳細に解析し,理論モデルとの比較を行い,高密度プラズマ塊の挙動の物理的解明を目指す。
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