2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘起絶縁体金属転移の基礎過程解明と新規放射線検出素子開発への展開
Project/Area Number |
21760704
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
越水 正典 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (40374962)
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Keywords | 永続的光伝導 / ペロブスカイト型マンガン酸化物 / 放射線照射 / 電子相関 / 軌道秩序 / 電荷整列 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型Mn酸化物は,電荷,スピン,軌道,格子の強い相互作用により複雑な相図を示す。これらの相互作用は外圧,電場,磁場,X線といった摂動によりバランスを崩し,物性に劇的な変化をもたらす。中でもX線を用いた照射実験では,既知のものとは異なる興味深い照射効果が報告されている[1]。既知の照射効果は格子欠陥の生成や化学結合の生成/切断を伴うが,上記の新奇な照射効果には僅かな格子歪みの変化が随伴するのみである。この特異な照射効果についての研究はほとんどなされておらず,その詳細は未解明のままである。そこで本研究では,当該X線照射効果発現の必要条件を見いだすことを目的とした。 研究対象として基底状態の異なるLa7/8Sr1/8MnO3(LSMO)とLa7/8Ca1/8MnO3(LCMO)を選んだ。前者はこれまでに照射効果が観測されている電荷/軌道秩序状態(ポーラロン秩序)にあり,後者は電荷秩序を呈さず,hole-poorな媒体中にhole-richな領域が相分離した状態にある。このhole-poor領域は軌道秩序で特徴付けられ,ポーラロンが短距離に相関している。この二つの物質に対し,X線照射実験を行い,それらの結果からペロブスカイトMn酸化物におけるX線誘起永続的光伝導(PPC)の発現挙動を探究した。 その結果、LSMOとLCMOの両方の系において、電気抵抗率は,X線照射量の増大に伴い低下し,照射停止後も低抵抗状態が維持されるPPCが観測された。これは,ペロブスカイト型Mn酸化物の電荷秩序を呈さない系における初のPPC観測結果である。この結果から,電荷秩序相の形成が,必ずしもPPCを起こす条件とはいえないことが示された。
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