2009 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分子形燃料電池と電力変換装置の相互作用が触媒劣化に及ぼす影響
Project/Area Number |
21760723
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
鵜野 将年 Japan Aerospace Exploration Agency, 宇宙科学研究本部, 研究員 (70443281)
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Keywords | 燃料電池 / 電力変換装置 / 触媒 / 劣化 / 電気二重層 / 電荷移動抵抗 / 電位サイクル |
Research Abstract |
燃料電池の出力電圧は直流であり、且つ、動作条件により大きく変動するため、通常はDC-DCコンバータやDC-ACインバータ等の電力変換装置を介して負荷に接続される。これらの電力変換装置はスイッチングモードで動作するため、動作周波数に応じたリップル電流成分が発生する。この場合、燃料電池には平均直流電流にリップル電流が重畳した電流が流れることになり、それに応じて燃料電池の電位も変動することになる。燃料電池の主な劣化モードとしてPt触媒の有効表面積の低下が挙げられるが、この劣化モードは電位変動によって顕著に進行することが知られている。本研究では、電力変換装置との相互作用により発生する高周波の電位変動が燃料電池の触媒劣化に及ぼす影響を定量的・定性的に評価することを目的としている。 本年度は発電状態の燃料電池に対し、1.直流、2.交流10Hz、3.交流1kHzの3条件の電流負荷を用いてそれぞれ50時問に渡る運転を行い、サイクリックボルタンメトリにより触媒有効表面積の劣化傾向の観察を行った。その結果、直流負荷と交流1kHzの条件では同程度の劣化率であったのに対して、交流10Hzの条件では劣化の進行が顕著であることが確認された。一般的に電気化学反応のインピーダンスは電気二重層と電荷移動抵抗の並列回路を用いて表され、Ptの劣化反応も同様であると考えられる。1kHzの高周波の条件では交流成分が電気二重層容量に吸収されたため劣化率は小さく、それに対して10Hzの低周波条件では電荷移動抵抗にも交流電流成分が流れることでPt劣化反応が進行したのではないかと推察される。 今後は0.1Hz、1Hz、100Hz等の他の周波数帯でも同様に実験を行い、劣化-周波数依存性の詳細データを取得する共に、Pt劣化反応の時定数を含む劣化メカニズムの解明にも取り組む予定である。また、非発電状態のセルに対しても電位サイクル実験を行い、発電状態との劣化率の差異を観察する予定である。
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