2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
手島 康介 九州大学, 理学研究院, 助教 (20447593)
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Keywords | 遺伝子重複 / 遺伝子変換 / 遺伝子系図 / 集団遺伝学 / ゲノム進化 / 適応進化 / 機能獲得 / Coalescent simulation |
Research Abstract |
生物は進化的タイムスケールで徐々に新たな機能を獲得し、結果として現在見られるような多様かつ複雑な存在になったものと考えられる。このように複雑な生物の機能は、もとを遡れば、ゲノムにおける新規遺伝子の獲得に端を発するものと言える。本研究は、生物が遺伝子重複を通して新規機能を獲得するメカニズムを理論的に研究し、それによって実際の重複遺伝子がどりようなメカニズムのもとで進化してきたかを明らかにすることを目的としてきた。本年度は、これまでに開発を行ったシミュレーションプログラムを用いて、重複遺伝子内および近傍の領域に蓄積する遺伝的変異について詳細に調べた。 重複遺伝子に蓄積する遺伝的変異は突然変異・自然選択・遺伝子変換といった様々なメカニズムの影響を受けて形成される。それらの影響を、実際のデータから分離・特定することで進化メカニズムを明らかにしようとするのが多くの研究者の目指しているところである。特に重複遺伝子を持つことは生物の生存に有利に働くという考えもあるため、本研究では重複を持ったゲノムに対して有利な自然選択が働いた場合について特に詳細な研究を行った。その結果、重複遺伝子内部よりもそのごく近傍の領域を調べた方が自然選択の影響を検出しすいことが明らかになった。これは他の研究者が指摘していない新しい発見であった。自然選択の影響について、その検出率についても詳細に調べた。これら一連の研究の結果は、今後さらに進められるであろうゲノムレベルの重複データの解析に重要な知見を提供するであろう。さらにここで開発したシミュレーションプログラムも解析ツールとしても有効に用いられるであろうと考えている。本研究の一連の研究結果はGenetics誌に発表した。
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