2009 Fiscal Year Annual Research Report
食植性甲虫類における寄主幅拡大のメカニズム:成虫による副食草の利用がもたらす効果
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21770012
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
藤山 直之 Hokkaido University of Education, 教育学部, 准教授 (90360958)
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Keywords | 食植性昆虫 / 寄主植物特異性 / 寄主幅 / パフォーマンス / エゾアザミテントウ / 自然選択 / 多面発現 / 遺伝相関 |
Research Abstract |
初年度にあたる本年度は、エゾアザミテントウとその主な食草のアザミ類(キク科)および副次的食草である可能性が高いルイヨウボタン(メギ科)とミヤマニガウリ(ウリ科)を材料とし、自然条件下における食草の利用状況と幼虫の食草利用能力との関係についての定量的データの集積を開始した。実施予定だった'成虫と幼虫のパフォーマンス形質間の相関'に関しては、主に成虫パフォーマンスの査定の難しさにより予備的知見を得るにとどまったため、来年度以降に再度遂行する必要がある。結果の大部分は未だ解析中であるが、現在までに以下のような予備的知見が得られている。 野外調査では、エゾアザミテントウによるミヤマニガウリの利用はアザミの資源量が激減する秋口に新成虫の一部によって生じていることが確認され、越冬成虫および幼虫には利用されていない可能性が高いと考えられた。一方、ルイヨウボタンに関しては、一部の新成虫による加害に加え、ある地点ではアザミと接触している株で例外的に産卵の痕跡と摂食中の幼虫を確認し、別の地点では幼虫のものと考えられる食痕を確認した。今後、これらの地点において幼虫がルイヨウボタンで成育を完了しているかどうかを明らかにする必要がある。実験条件下で幼虫の食草利用能力を査定したところ、ルイヨウボタンとミヤマニガウリ上での成育状況は全体的にアザミ上でのものと同程度かそれ以上に良好であった。この傾向に対し、ミヤマニガウリの自生が確認されなかった地点のエゾアザミテントウ集団では、ミヤマニガウリ上での羽化率が有意に低かった。 これらの知見は、食植性甲虫類の幼虫の副食草利用能力が、遺伝的な相関を介して成虫に作用する自然選択を通じ、多面発現的に進化するという本課題の仮説と矛盾しないものである一方で、幼虫の副食草利用能力は必ずしも成虫による利用頻度に応じて漸進的に向上していくわけではない可能性を示唆するものである。
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