2010 Fiscal Year Annual Research Report
食植性甲虫類における寄主幅拡大のメカニズム:成虫による副食草の利用がもたらす効果
Project/Area Number |
21770012
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
藤山 直之 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90360958)
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Keywords | 食植性昆虫 / 寄主植物特異性 / 寄主幅 / パフォーマンス / エゾアザミテントウ / 自然選択 / 多面発現 / 遺伝相関 |
Research Abstract |
研究2年目にあたる本年度は、エゾアザミテントウとその主食草のアザミ類(キク科)および副食草である可能性が高いルイヨウボタン(メギ科)とミヤマニガウリ(ウリ科)を材料とし、各食草の利用状況に関する野外調査を継続したとともに、2通りの室内実験を実施した。得られた知見の概要を以下に示す。 1.野外調査では、新成虫による秋口のミヤマニガウリの摂食が再確認された一方で、越冬成虫および幼虫によるこの食草の利用が生じていない事はほぼ確実であると考えられた。ただし、ミヤマニガウリの利用が確認されたのは全4地点のうち2地点においてであり、別の1地点ではミヤマニガウリの自生を新たに確認したものの全く利用されておらず、残りの1地点にはミヤマニガウリが自生していなかった。ルイヨウボタンに関しては、今年度は例外的にほぼ全ての調査地で秋口まで葉が残っており、ミヤマニガウリの利用が観察された地点と同じ2地点で新成虫のみによる加害を確認した。 2.飼育実験を通じ、3食草上での成虫と幼虫のパフォーマンス間の相関を検討したところ、アザミ上では特定の関係が検出されなかった一方で、副食草上では負の相関が検出される傾向があった。成虫と幼虫のパフォーマンス間に負の遺伝相関が存在する場合、「食植性甲虫類の幼虫の副食草利用能力が、遺伝的な相関を介して成虫に作用する自然選択を通じ、多面発現的に進化する」という本課題の仮説とは異なり、このトレードオフはむしろ寄主拡大を妨げる要因となっている可能性がある。 3.ミヤマニガウリを餌とした人為選択実験を開始し、幼虫2世代分および成虫1世代分のデータを蓄積した。これまでに、成虫と幼虫のパフォーマンス形質には有意な遺伝分散が存在し、幼虫の成育パフォーマンスが人為選択に応答して変化することが明らかになった。次年度以降も実験を継続し、成虫のパフォーマンスの変化を明らかにする計画である。
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