2010 Fiscal Year Annual Research Report
ササラダニ類の性に関する研究ー樹上と土壌の比較によるアプローチー
Project/Area Number |
21770024
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
唐澤 重考 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30448592)
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Keywords | 進化 / 生態 / 土壌動物 / ササラダニ |
Research Abstract |
福岡の土壌と樹上環境から1,000個体以上のササラダニ類を採集し,種同定,および,繁殖様式の決定を行った.また,沖縄県の照葉樹林の土壌と樹上環境から採集された16,000個体以上のササラダニ類の繁殖様式の決定も行った.その結果,土壌の優占種は単為生殖であり,その個体数割合は70%を超えていた.樹上環境では,広葉樹と針葉樹では種類相が大きく異なることが明らかとなり,広葉樹から得られた種のほとんどは両性生殖種であった一方で,スギの枝葉においては,単為生殖種も出現した.この単為生殖種は土壌でも出現する種であった.次いで,18S rDNAに基づく系統樹を作成し,種間の系統関係を調べたところ,土壌で両性生殖から単為生殖が複数回進化していること,土壌から樹上環境には複数回進出した,ことが分かった.これらのことは,単為生殖は土壌環境でのみ適応形質であることを示唆している.そこで,ササラダニ類における単為生殖は落葉が落下した直後の新しい環境への適応形質である,という仮説を検証するため,シイノキとクスノキ落葉の分解に伴うササラダニ類の定着過程をリターバック法を用いて調べた.その結果,合計76種4,326個体のササラダニ類が得られ,時間の経過とともに種組成は明瞭に変化し,リターバック設置から1月後は単為生殖種のみが見られ,時間が経過するにつれて両性生殖種の侵入が確認できた,したがって,ササラダニ類の単為生殖は,落葉が落下した直後の新しい環境で個体数を増加する上で両性生殖種より有利な戦略となるため,土壌環境にて単為生殖が何度も進化していると考えられた.
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