2010 Fiscal Year Annual Research Report
キスゲ属植物における送粉シンドロームの平行進化:交雑による遺伝子浸透仮説の検証
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21770025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安元 暁子 京都大学, 生態学研究センター, 研究員(科学研究) (10516751)
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Keywords | 種分化 / キスゲ属 / 雑種形成 / 遺伝子浸透 / 送粉シンドローム / 平行進化 / 葉緑体DNAの系統 / 浸透性交雑 |
Research Abstract |
キスゲ属では蛾媒花種が平行進化、つまり花色、花香、開花時間の3形質が揃って平行進化したとされている。蛾媒花の平行進化の原因を探る一環として、昨年度に花形質の測定と送粉者相の確認を行った。また葉緑体DNA系統樹を試みたが外群の位置が決まらないという問題が残った。今年度はDNA系統樹の完成を目指した。外群としてキスゲ属の姉妹属植物キキョウランの配列決定を再び試したが、やはり葉緑体DNAの3領域中の1領域でアライメントがとれず、2領域の系統樹では信頼できるブーツストラップ値が得られなかった。同じ3領域について比較的近縁な物Muscari comosumの配列をDDBJから得て系統樹を作成したところ、信頼できる系統樹が得られた。2領域のみを用いてキキョウランも加えた系統樹を作ったところ、キキョウランはM.comosumとキスゲ属の間に位置したため、外群の位置に大きな問題はないと考えられる。 系統樹では西日本グループと東日本グループが大きなグループに分かれた。西日本グループは蝶媒花と蛾媒花を、東日本グループはハナバチ媒花と蝶媒花と蛾媒花を含んでいた。その結果、蛾媒花・蝶媒花・ハナバチ媒花のどの形質群が祖先形質群だとしても、他の2つの形質群が複数回進化したことが示唆された。Muscuri属の送粉シンドロームはハナバチ媒花が主であると考えられる。そのため、キスゲ属ではハナバチ媒花から、蝶媒花・蛾媒花がそれぞれ複数回進化したと考えられる。また、蛾媒花に注目すると、西日本グループは半日咲きのキスゲのみを含み、東日本グループは一日咲きのエゾキスゲと半日咲き蛾媒花種キスゲを含んでいた。東日本グループ内で半日咲きのキスゲは西日本グループとの接触域のみに分布していたため、グループ間での交雑の結果、葉緑体DNAや花形質に関わる核DNAが浸透し、見かけ上の蛾媒花の平行進化が起きた可能性が高いと考えられる。
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Research Products
(6 results)