2009 Fiscal Year Annual Research Report
盗蜜を介した送粉者相互作用が植物の繁殖に与える影響
Project/Area Number |
21770027
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堂囿 いくみ Kobe University, 人間発達環境学研究科, 教育研究補佐員 (70462489)
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Keywords | 生態学 / 進化 / 保全 / 遺伝的多様性 / 送粉生態学 |
Research Abstract |
訪花動物による「盗蜜」は、これまで植物にとって不利益を与えると考えられてきた。しかし、盗蜜に対する他の送粉者の反応と、それを介した植物の繁殖への間接的な影響はこれまで注目されてこなかった。マルハナバチーエゾエンゴサク送粉系について2年間にわたる野外調査を行った結果、盗蜜された割合の高い集団では、種子生産量(果実数と種子数)が低下していた(Dohzono et al. 2008)。果実数の低下は、適法訪花をする在来マルハナバチが盗蜜花を避け、株内訪花が減少したため、また果実あたりの種子数の低下は、蜜量の減少により在来マルハナバチの滞在時間が減少したため、と推測されるが実証データは得られていない。加えて、種子生産量が低下しても、他家受粉率は増加している可能性にも注目する必要がある。そこで本年度は、植物の送粉に関する野外調査と、繁殖様式を明らかにするための遺伝的解析を行った。 (1) 野外調査:調査地は、申請者がこれまで調査を行ってきた北海道日高地方において、盗蜜の頻度が異なる5地点にコドラートを設置した。各地点にて、30個体の葉っぱと果実をサンプリングし、遺伝的な解析に使用した。 (2) 遺伝解析:遺伝解析には、多型性の高いマイクロサテライトマーカーを使用する必要があり、今年度はマーカー開発を行った。50個のプライマーを設計し、エゾエンゴサクの集団内の多型性を確認したところ、5個のプライマーが遺伝的多様性の評価に使用できることがわかった。遺伝的解析にはさらにプライマーを増やす必要がある。 (3) 論文執筆:盗蜜をおこなうセイヨウオオマルハナバチが、植物の繁殖に与える影響について、これまでの研究成果をレビューし、論文として発表した。
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