2010 Fiscal Year Annual Research Report
SOG1を介した植物のDNAチェックポイント機構の解析
Project/Area Number |
21770047
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
愿山 郁 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究員 (10346322)
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Keywords | DNAチェックポイント / DNAダメージ / ゲノム / 植物 |
Research Abstract |
本研究では植物が放射線照射などによってDNA損傷を受けた場合、細胞を安定に維持するために重要なレスポンスであるDNAチェックポイントの研究を行っている。これまでのDNAチェックポイントの研究は酵母や動物細胞を用いて行われており、植物におけるDNAチェックポイントに関してはまだまだ未知の部分が多い。植物は固着式のライフスタイルをとっているため、DNAが様々な損傷を受けるような大きな環境変化が生じても、その場から逃れる事は出来ずその厳しい状況に適応しなければならない。このように動物とは全く異なるライフスタイルを持つ植物は、動物とは異なる植物独自のDNAチェックポイント機構を進化の過程で獲得してきた事が予想される。そこで我々は、植物だけがもつチェックポイントの仕組みを明らかにすることを目的としてきた。我々は以前に、植物にしか存在しないSOG転写因子がDNA損傷を受けた後の細胞分裂の停止やゲノムの安定性、さらには数百もの遺伝子の転写誘導に重要な役割を果たしていることを示し、SOGがチェックポイントの中で中心的な役割を果たしていること、また植物は独自のチェックポイント経路を持っていることを明らかにした。今回は新たにSOGが分裂細胞(茎頂分裂組織や根端分裂組織)でのみ発現している事を示し、植物においてもDNAチェックポイントは細胞分裂が活発な組織でのみ機能しており、分化の進んだ組織においては必要ないことを明らかにした。またSOGにGFPを結合させ、細胞内でのSOGの局在を観察したところ、SOGは転写因子の典型的な局在部位である核に存在していた。さらにSOGの局在がDNA損傷の有無によって変化する可能性が考えられたが、SOGは常に核に局在していることを明らかにした。SOGの転写量はDNA損傷によって変化せず、また局在部位も変化しないことから、DNA損傷が生じた場合、SOGは翻訳後修飾などによってSOGの活性のオンとオフを切り替えていると予想される。今後はSOGタンパク質の修飾やSOGとの相互作用因子を同定することによって、さらに植物独自のDNAチェックポイントの解明が期待される。
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