2009 Fiscal Year Annual Research Report
比較リン酸化プロテオミクスによる植物免疫シグナル伝達因子の同定
Project/Area Number |
21770059
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中神 弘史 The Institute of Physical and Chemical Research, 植物免疫研究チーム, 研究員 (20435663)
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Keywords | リン酸化 / プロテオミクス / 植物免疫 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
作物の安定生産は、人口増加に伴う食糧危機を回避する一つの手段として重要な課題である。長年の交配による抵抗性品種の選抜育成および様々な農薬の開発にも関わらず、現在でも約3割の作物が、細菌、カビ、線虫、ウィルス、昆虫等の植物病原体や雑草の被害により失われている。その解決策として本研究は、植物免疫に関与するタンパク性因子をプロテオーム解析手法を用いて同定・解析することで植物免疫の分子機構の理解を深め、得られた知見に基づく効率的な品種改良により、農薬にも頼らない持続的な耐病性作物の作出を目指す。 本研究は病原体接種時にリン酸化修飾が誘導される植物側の因子の網羅的解析を目的としている。リン酸化プロテオミクス技術は既に整っており、本研究の遂行にはまず比較定量解析法を確立する必要がある。そこで安定同位体標識した窒素源を植物細胞内に取り込ませてタンパク質をin vivoで標識する方法(15N代謝標識法)の最適化を試み、シロイヌナズナの懸濁培養細胞を材料とした比較解析を可能にした。並行して、得られる大規模データを効率よく解析できるようにデータ解析システムのカスタマイズを行った。次いで確立した方法を用い、「basal defense」を誘導するMAMPsの一つであるFlg22(細菌の鞭毛由来のペプチド)処理に伴うシロイヌナズナのリン酸化プロテオームの変動解析を行った。その結果、Flg22処理により特異的にリン酸化が誘導され、植物免疫シグナルの制御に関与していると考えられる新規のタンパク性因子の同定に成功した。
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