2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770076
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (70432010)
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Keywords | シクリッド / 嗅覚 / V2R / V1R2 |
Research Abstract |
魚類V1R嗅覚受容体遺伝子は、生殖行動を引き起こすためのホルモナルフェロモンをリガンドとすると予想されている。そのV1R遺伝子は計6コピー存在する事が明らかとなっており、V1R1~V1R6と名付けられている。私はシクリッドのV1R遺伝子群が進化にどのように寄与してかを明らかにすべく研究を進めている。本年度においては、その中でも特にV1R2アリルにおいて、今から1000万年ほど前に非常に強い正の淘汰圧が働いたことを進化統計学的に明らかにすることに成功した。また、正の淘汰によってできた新しいアリルと、既存の古いアリルが1000万年の間、維持されてきたこともわかった。つまり機能的に異なるアリルがシクリッドの祖先集団中に長期間維持されてきたことになる。この原因を探るために、我々はビクトリア湖、マラウィ湖、タンガニィカ湖に生息するシクリッドの中立領域の16遺伝子座の配列を決定し、最尤法とベイズ法を用いてシクリッドの分岐に伴う集団サイズの推定をおこなった。その結果、各湖の祖先となる集団の有効集団サイズが100万を超え、非常に大きかったことが予想された。また、その大きな祖先集団はいくつかの小集団に分かれていた可能性も示唆された。つまり、1000万年前に正の淘汰によって生じた機能的に異なるアリルが、非常に大きな祖先集団において維持され、それらが各湖に分配されたことで現在の三大湖産シクリッドにおいて高いV1R2の多様性が保持されているといえる。祖先集団中において多様性が維持される機構としては、大きな集団中に存在するそれぞれの小集団中に異なるアリルが固定し、湖に流入した小集団間で交雑を起こしながら放散したことがもっとも大きな要因となったのではないかと考えている。今年度においては、V1R2に加えて、V1R1において、Tropheini族のシクリッドの祖先集団において、非常に強い正の淘汰が働いたことも明らかにすることに成功した。このことは、V1R遺伝子群がシクリッドの進化過程において、現在は明らかにされていない生態的に重要な働きをしていることを強く示唆している。
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Research Products
(6 results)