Research Abstract |
海水魚は体液の約3倍の高浸透圧環境で生存しているため,常に体液中の水を環境水に奪われる。そこで海水魚は海水を飲み,エラ塩類細胞(Na^+,Cl^-),腸(Ca^<2+>,Mg^<2+>),腎臓(Mg^<2+>,SO_4^<2->,ホウ酸,Ca^<2+>)から余剰なイオンを排出して体液浸透圧を維持する。本研究ではNaCl以外の海水成分(にがり成分:Mg^<2+>,SO_4^<2->,ホウ酸,Ca^<2+>)の尿濃縮・腎排出に着目し,フグゲノムを利用した輸送体遺伝子の特定及び腎排出モデルの構築を目指した。(1腎尿細管における硫酸排出を担うトランスポーターSlc26a6Aを同定し,フグSlc26a6Aが哺乳動物の相同遺伝子(マウスSlc26a6)に比べて10~100倍の硫酸透過性を有することを明らかにした。(2)海水魚がホウ酸を尿中に濃縮して排泄することを初めて見いだし,その担い手となるホウ酸輸送体Slc4a11を同定した。Xenopus oocyteを用いた電気生理学的な解析の結果,フグSlc4a11は起電性の排出型ホウ酸イオンチャネルであることを明らかにした。(3)フグ腎臓に発現するMg^<2+>輸送体遺伝子の網羅的な発現解析の結果,尿細管に高発現するMg^<2+>輸送体遺伝子を3種特定した。また哺乳動物の神経や筋肉の細胞膜でCa^<2+>排出を担うNa^+/Ca^<2+>交換輸送体(Slc8a2,NCX2)が海水魚の腎臓に高発現することを見いだし,フグNCX2によるCa^<2+>の腎排出モデルを提案した。(4)海水魚は尿中からNa^+,Cl^-,H_2Oを再吸収してMg^<2+>やSO_4^<2->を濃縮する。トラフグ腎臓の集合管にNa^+-K^+-Cl^- cotransporter 2が高発現することを見いだし,尿濃縮モデルを提案した。
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