2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770085
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺井 洋平 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, グローバルCOE教員 (30432016)
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Keywords | 種分化 / 種形成 / 適応 / 光受容体 / 生殖的隔離 |
Research Abstract |
本年度は主にデータの解析を中心に研究を行った。始めにこれまでヴィクトリア湖の様々な透明度、深さで測定を行った水中の環境光スペクトルの解析を行った。その結果、透明度により光の減衰率が透明度ごとに、またそれぞれの波長ごとに異なることが明らかになった。この波長ごとに異なった光の減衰率が異なった透明度異なった深さで、そこにだけ存在する環境光を作り出し、水中の多様な光環境を生み出している明らかになった。次にそれぞれの深さと透明度の環境光に生息する種が、視覚をその環境光に適応させているか解析を行った。解析は本研究で明らかになったすべてのLWS視物質の吸収波長を用い、それぞれの環境光をどの種の視物質が一番効率よく吸収できるかを算出して行った。その結果、それぞれの種がもつLWS視物質はその種が生息する光環境で最も効率よく光を吸収することができることが明らかになった。つまり、それぞれの種が限られた光の成分が存在する環境で効率よく光を吸収できるように視覚を適応させてきたことが明らかになった。最後にそれぞれの種のオスが呈する婚姻色が生息する環境光で目立つか、つまり環境光を効率よく反射し、かつ適応した視覚に効率よく吸収される光を反射しているかを解析した。解析は婚姻色を16の部位に分け、その色を主波長に変換して波長の分布を求め、その分布と視覚により吸収される環境光の分布の重なりを算出することにより行った。その結果、それぞれの種の婚姻色はその種の視覚に吸収される環境光と最も重なりが大きく、同種に最も目立つことが明らかになった。これらの結果から、視覚の適応が引き起こす種分化がヴィクトリア湖のシクリッドで共通に起こってきた種分化の機構であることが明らかになった。
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