2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770091
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
瀧本 岳 東邦大学, 理学部, 講師 (90453852)
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Keywords | 数理モデル / ギルド内補食 / 一次生産性 / 撹乱 / 生態系サイズ / 食物連鎖長 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ギルド内捕食に注目して、食物網構造の環境条件依存性を理論的に解明することである。本年度は、まず、食物連鎖長の決定要因を探った近年の野外研究のレビューを行い、歴史的には一次生産性や撹乱が食物連鎖長の決定要因として重要視されてきたが、最近の野外研究からは一次生産性や撹乱の影響より島面積や湖水体積といった生態系サイズの影響のほうが検出されることのほうが多いことを見いだした。そのうえで、これまでに開発を進めてきたギルド内捕食系の数理モデルを改善し、一次生産性や撹乱、生態系サイズが食物連鎖長に与える影響を理論的に解析した。モデル解析の結果、ギルド内捕食が弱いときには、一次生産性の増加や撹乱の軽減、生態系サイズの増加はいずれも食物連鎖長の増加に貢献していた。一方、ギルド内捕食が強いときには、一次生産性が高くなったりや撹乱が弱くなったりすると、ギルド内捕食者が増えすぎてギルド内被食者を絶滅させてしまうため、食物連鎖が長くなることはなかった。しかし、ギルド内捕食が強いときでも、生態系サイズが大きくなることによって、ギルド内捕食者とギルド内被食者の共存が促進されるために、食物連鎖が長くなることが分かった。また、この生態系サイズの効果が、ギルド内被食者の移動分散能力に依存して決まることも明らかにした。この結果は、生態系サイズの効果がよく検出されるという野外パターンと合致している。得られた結果は、野外研究のレビュー結果と併せて、1編の投稿論文として準備中である。
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