2010 Fiscal Year Annual Research Report
大陸氷河の欠如が旧北区系鳥類の種分化に与えた影響に関する研究
Project/Area Number |
21770093
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Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
齋藤 武馬 (財)山階鳥類研究所, 自然誌研究室, 研究員 (40521761)
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Keywords | 種分化 / 分子系統地理 / 大陸氷河 / 分類学 / 鳥類 |
Research Abstract |
大陸氷河による地理的隔離が種分化を促進させた北米やヨーロッパとは異なり、氷河が小規模にしか発達しなかったユーラシア大陸東部において、北方系鳥類の種分化とその遺伝的特性がどのようにこれらの地域とは異なり、また、どのような特性をもつのかを調べることが本研究の目的である。そのため、ユーラシア大陸東部の鳥類の姉妹種間及び亜種間の分岐年代とその遺伝的特性について調べることを目指した。H21年度は、繁殖期の野外採集を行う前に、研究室で予備実験を行い、種内の地域個体群(または亜種)に大きな遺伝的変異を持つ種があるかどうか調べた。その結果、メボソムシクイ、イイジマムシクイ、エゾムシクイ、カワラヒワ、ビンズイ、ヒバリ、アオジ等において大陸と日本、または日本国内の地域個体群間において、亜種もしくは別種レベルの大きな遺伝的差異を持つことが明らかとなった。このため、H22年度はこれらの種のうち、メボソムシクイとイイジマムシクイについて重点的に調べた。メボソムシクイに関しては、これまで採集してきたDM試料に加え、外部形態と音声データの解析を加えた分類の論文を英国の鳥学会誌IBISに発表した。また、イイジマムシクイに関しては鹿児島県トカラ列島と伊豆諸島三宅島で野外調査を行った。その他の種についても現在データを解析中である。これらの種の研究から得られた結果は、北方系鳥類における、日本産個体群と大陸産個体群の系統関係や遺伝的特性を明らかにするだけではなく、北方系日本産鳥類種の起源を明らかにする上でも大変重要な知見である。さらに、この成果は系統地理や分類などの基礎研究だけでなく、保全を行う上でも今後有益な研究となることが期待される。
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