2010 Fiscal Year Annual Research Report
第三者を介してのみ成立する寄主利用様式の進化学的研究-専門的えい食性を例に-
Project/Area Number |
21770095
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
吉武 啓 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 任期付研究員 (50517662)
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Keywords | 生物多様性 / 生物間相互作用 / 資源利用 / 間接効果 / 植食者 / クロツヤサルゾウムシ / タニウツギ / 虫こぶ |
Research Abstract |
本研究では、第三者を介してのみ利用可能な資源に対する特殊化の進化メカニズム解明を上位目標に掲げた上で、植食者(ゾウムシ)-ゴール形成者-寄主植物(タニウツギ)系に見られる専門的えい食性(他者が形成したゴールだけを利用する習性)という間接的な寄主植物の利用形態に着目し、ゾウムシを対象として専門的えい食性の適応的意義を解明することを目的とする。平成22年度は、前年度に引き続きクロツヤサルゾウムシ(以下)ゾウムシ類について、生態情報とDNA分析用標本の収集を目的として、韓国各地(江原道、忠清北道、慶尚北道、慶尚南道)と日本の本州各地(宮城、山形、福島、新潟、栃木、群馬、茨城)で野外調査を行い、ゾウムシの寄主植物、幼虫期の食餌資源およびその資源サイズ・密度、ゾウムシによる寄生率、ゾウムシ寄生蜂による寄生率やゾウムシの生存率、同一資源を利用する競争者の有無とゾウムシの生存に対する影響を調査した。その結果、韓国産種はゴールの存在の有無に関わらず幼虫期に花蕾のみを利用することや機会的えい食性とみなされる日本産種には個体群間で花蕾・ゴールに対する選好性に差異が認められ、とくに同所的に食餌資源をめぐる競争者が存在する場合にはどちらかの資源に偏った寄生率を示す傾向があることなどが示唆された。また、新たに追加されたDNAデータを既存のデータセットに加えて分子系統学的な再解析を行った他、産卵段階での食餌資源に対する特殊化の程度や食餌資源の質的条件と幼虫期の食餌資源に対する特殊化の程度を明らかにするための生態実験に着手した。
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