2011 Fiscal Year Annual Research Report
第三者を介してのみ成立する寄主利用様式の進化学的研究-専門的えい食性を例に-
Project/Area Number |
21770095
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
吉武 啓 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 任期付研究員 (50517662)
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Keywords | 生物多様性 / 生物間相互作用 / 資源利用 / 間接効果 / 植食者 / クロツヤサルゾウムシ / タニウツギ / 虫こぶ |
Research Abstract |
本研究では、第三者を介してのみ利用可能な資源に対する特殊化の進化メカニズム解明を上位目標に掲げたうえで、植食者(ゾウムシ)-ゴール形成者-寄主植物(タニウツギ)系に見られる専門的えい植性(他者が形成したゴールだけを利用する習性)という間接的な寄主植物の利用形態に着目し、ゾウムシを対象として専門的えい食性の適応的意義を解明することを目的とする。 平成23年度は、前年度に引き続きクロツヤサルゾウムシ(以下ゾウムシ)類について、実験材料や補足的な生態データの収集を目的として日本各地(茨城県、東京都、神奈川県、静岡県、長野県など)で野外調査を実施し、ゾウムシの寄主植物、幼虫期の食餌資源およびその資源サイズ・密度、ゾウムシによる寄生率、ゾウムシ寄生蜂による寄生率やゾウムシの生存率、同一資源を利用する競争者の有無とゾウムシの生存率に対する影響を調査した。新規サンプルから抽出したDNAや新たに得られた生態データを追加した上で再解析を行い、ゾウムシの系統および対象群内での寄主利用の進化プロセスに関する仮説の精度を高めた。これまでの研究結果から選定した近縁なえい食者と非えい食者を材料として、産卵段階での食餌資源に対する特殊化の程度や食餌資源の質的条件と幼虫期の食餌資源に対する特殊化の程度を明らかにするための生態学的研究を実施した。その結果、専門的えい食性を示す種は産卵段階でゴールに特殊化していることなどが示唆された。さらに、寄生者による影響や同一資源をめぐる競争者によるゾウムシへの影響についても調査した結果、花蕾の方が鱗翅目幼虫の食害による影響を受けやすいことなどが示唆された。 その他、本研究の過程で明らかになったアルマンクロツヤサルゾウムシの寄主利用(寄主植物:ツクバネウツギ;幼虫期の餌資源:花蕾)に関する論文を日本甲虫学会誌上で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形態・分子情報に基づくゾウムシの分類学的研究と寄主利用の進化プロセスの推定については、すでに大要を把握できており、若干の新規データを追加すれば論文化可能な段階に達している。専門的えい食性の適応的意義の解明についても今年度の調査・研究により新規データを追加してデータセットを整えることでその解析まで漕ぎ着けることが十分可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、実験材料や補足的な生態データを収集するために野外調査を実施し、とくにサンプルやデータが少ない北海道での調査を行う。また、データを追加した上で再解析を行い、ゾウムシの系統および対象群内での寄主利用の進化プロセスに関する仮説を確定する。さらに、ゾウムシの食餌資源に対する特殊化の程度を明らかにするための生態学的研究を継続し、寄生者や競争者による影響についても調査する。これまでに得られた情報を取りまとめ、専門的えい食性の適応的意義を明らかにするための解析を行う。研究成果については、学術雑誌上や学会で発表するだけでなく、関連する情報をデータベース化して一般に公開することで、その普及に努める。
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