2011 Fiscal Year Annual Research Report
腐生菌と菌根菌の比較生物地理:ヒメツチグリ目の起源と進化を探る
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21770096
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (10509417)
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Keywords | 担子菌類 / キノコ / 腐生菌 / 菌根 / 生物地理 / 分子系統 / 地理的隔離 / 分散 |
Research Abstract |
野外調査:日本各地のみで野外調査を行い、計約100点の関連属菌のサンプルを得た。日本国内のサンプルについては、特に小笠原諸島父島および母島より計30点のサンプルを採集した他、琉球列島(西表島、沖縄島、石垣島)より22点、大東諸島(南大東島)より10点のサンプルを採集した。日本国内から記載されているヒメツチグリ属菌のうち小笠原産の種は大半が固有種と考えられており、生物地理を考察するうえで重要なサンプルである。同じ離島からのサンプルであるが、大陸島である沖縄と海洋島である小笠原の菌は起源が異なると考えられる。 海外調査は行わなかったが、共同研究者より提供された標本を基に形態観察とDNA実験を行った。この中には日本に分布するものと共通種とされているものも多いが、DNAレベルでは明確に別種とすべきものも多く含まれていると考えられる。熱帯アフリカ産菌類と他地域の菌類の生物地理学的な関係については現在さらなる解析を行っている。前年度の調査で採集されたスウェーデン産のTrichaster melanocephalusからDNA塩基配列を決定し系統解析を行ったところ、ヨーロッパ産のGeastrum triplexとほぼ同一の配列を示した,この結果は学術論文として出版された。 DNAデータ:上記で採集された標本全点からすでにDNAを抽出し、菌類のバーゴーデイングマーカーである核ITS領域の塩基配列を決定した。また、複数種について特にエリマキツチグリ近縁種を集中的にサンプリングし、核ITSのほか核LSU,atp6の複数遺伝子の塩基配列で解析した結果、エリマキツチグリ様の形態を持つ種の非単系統性が示された。この結果は複数の学会にて発表した他、学術論文として出版された。
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