2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770097
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
大村 嘉人 National Museum of Nature and Science, Tokyo, 植物研究部, 研究員 (40414362)
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Keywords | 進化 / 共生 / 地衣類 / サルオガセ / トレボウクシア |
Research Abstract |
共生生物として知られる地衣類の菌と藻の組合せは,全体の数%程度しか調べられておらず,菌と藻の共生関係や系統進化については,ほとんどのことが分かっていない.本研究では,極域から熱帯まで分布し,多様な属内分類群が含まれるサルオガセ属を材料として,菌と藻の分子系統樹を比較することによって,属内分類群および種ごとの共生関係の特性について明らかにし,本属における共生藻に関わる形質の分類学的再評価および共生関係の進化について考察することを目的とする. 平成21年度は,日本産サルオガセ属23種71点について菌と藻の共生関係を解析した.ITSrDNA領域による分子系統樹を作成したところ,菌の系統樹では3亜属2節がNJ法およびベイズ法によって支持された.それらのサルオガセ属の属内分類群に対応する共生藻の系統樹は,興味深いことにほぼ同様にまとまったクレードを形成し,さらに既知のトレボウクシア属の種が複数のクレードから成ることも示された.これらのことから,サルオガセ属内における菌と藻との間には相互の適応を伴った進化(共進化)が起こっている可能性が考えられたが,両者の系統樹は鏡像的なパラレルの関係にはなっておらず,共種分化は行っていないと推定された.なお,台湾および北海道において採集された標本を検査した結果,台湾新産種および日本での稀少種が含まれていることが判明したので,学術雑誌に発表した(研究発表参照).それらの貴重なサンプルおよび外国産種を含むサルオガセ属の全体的な分子解析については,平成22年度に実施する予定である.
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