2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21770098
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
富谷 朗子 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (60392940)
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Keywords | 進化 / 植物 / シアノバクテリア / 共生 |
Research Abstract |
シアノバクテリア-植物共生系における宿主の多様性・非特異性の機構と進化の解明をめざし、以下の研究を行った: 1)Nostoc属の宿主植物の多様性・特異性の実験的検証 シアノバクテリアと宿主植物との共生関係を検証するため、Nostoc属の単離培養株を材料に実験環境下での共生実験を行った。共生菌としては系統解析に用いた12株のうち10株を用い、宿主コケ植物Blasiaと共培養(n=2-4)し、細胞分化の状態と頻度および共生コロニーの生成率を顕微鏡を用いて経時的に観察し、定量的データを収集した。その結果、土壌や湖沼から単離された自由生活性株、またコケ植物以外の植物を宿主由来の共生性株でも、細胞分化が誘導されること、またその分化頻度は必ずしも共生性や株の由来する宿主には対応していないことが示唆される一方、培養期間中に細胞分化が観察されないものが存在した。さらに、共培養後の感染性については、異なる宿主および土壌・湖沼からの単離株にも、コケ植物との共生コロニーを生成する株が多く見られる一方で、共培養後にも共生コロニーを生成しない株があり、これらには上記にある細胞分化が誘導されなかった株が含まれた。 2)Nostoc属シアノバクテリア-植物共生特異性の進化 1)から得られたNostoc属の細胞分化・共生能に関する情報を、前年度に作成された分子系統関係と比較・検討した。その結果、細胞分化と共生能の間には明らかな相関がなく、また自由性/共生性や(元来の)宿主の系統等との関連は認められなかった。一方で、実験的に細胞分化を示さない株は独立のクラスターをなし、さらに、その中に細胞分化・感染性を持たないが含まれていた。このことは、宿主特異性は植物によるシグナルへの認識・応答機構の獲得から、安定した共生関係の構築へという段階を踏んで進化した可能性を示唆する。
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