2009 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳後修飾を指標にしたマウス神経幹細胞の分化・未分化を司る核内スイッチ分子の探索
Project/Area Number |
21770119
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新森 加納子 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (30457600)
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Keywords | 神経幹細胞 / プロテオミクス / 翻訳後修飾 / リン酸化 / 2D-DIGE / 分化制御 / 転写調節因子 / 質量分析 |
Research Abstract |
神経幹細胞は自己複製能を持つと同時に、さまざまな分化制御を受けながらニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトを作り出すことができる。神経幹細胞がニューロンやグリア細胞へと分化する過程には、細胞外来性シグナルと細胞内在性プログラムが関わっており、個体の発生初期から成体に至るまで時空間的に厳密に制御されている。そこでこれらに関わる重要な蛋白分子群とその翻訳後修飾を含む構造と機能の変化を明らかにするため、翻訳後修飾プロテオミクス解析による神経幹細胞分化制御因子のスクリーニングを試みた。神経幹細胞を培養する培地からFGF2の除去と再刺激の後、核蛋白質を分画し、これを二次元電気泳動で分離し画像プロファイルを比較定量解析し、分化・未分化状態で蛋白質の発現に差異の見られる核内因子を検出した。その結果、FGF2刺激により発現量が変化した蛋白質が80個検出され、さらにリン酸化蛋白質を特異的に染色する試薬を用いた解析から、80個中の24個はリン酸化蛋白質であることが判明した。これらの分子群を質量分析により同定した結果、転写調節因子、クロマチンリモデリングなど核内動態に関与する蛋白質が含まれていた。なかでも本研究により見出された転写調節因子のリン酸化が亢進すると神経幹細胞の未分化性が維持されることが明らかとなった。このことからこの分子のsiRNA処理を施すことで細胞が分化するか否か試みた。その結果、siRNA処理により細胞の未分化性維持が破綻し、分化が促進されたことで神経突起が伸長しニューロンへと分化する現象が観察された。これらの結果から転写調節因子のリン酸化による神経幹細胞の分化調節の一端が明らかとなった。
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