2010 Fiscal Year Annual Research Report
糖脂質マイクロドメインにおける細胞膜分子の可視化動態解析
Project/Area Number |
21770124
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
樺山 一哉 東海大学, 糖鎖科学研究所, 准教授 (00399974)
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Keywords | マイクロドメイン / 生細胞イメージング / 糖脂質 / 成長因子受容体 / 蛍光顕微鏡 / ガングリオシド |
Research Abstract |
本研究計画の遂行に必要な、IR-sEGFPおよびEGFR-mCherryの安定発現株作製をCHO-K1細胞にて実施し、これに成功した。この細胞株において顕微鏡を用いた光退色後蛍光回復法(FRAP)測定を行い、得られた蛍光回復曲線に対して非線形カーブフィッティング解析を行った。その結果、蛍光分子の拡散成分が1成分であると仮定したよりも2成分と仮定した方が、カイ2乗値(χ^2)が減少することが判明した。これは膜受容体を複数の異なる側方拡散成分に分離できる(即ち、細胞膜が2つ以上の不均質な成分で構成され、そこをこれらの受容体が拡散している)ことを示している。 続いて膜脂質の組成を外因的に調節するために、コレステロースを包括し除去する試薬であるMβCDを用いてFRAP測定を行った。その結果、動的比率が11~13%程度減少した。この時IR、EGFRともに遅い拡散成分は同等であったが、速い拡散成分の比率が顕著に減少していた。拡散定数においてはMβCD処理による顕著な変化はみられなかった。一方、IR-sEGFPにおいて糖脂質生合成阻害剤D-PBPPによる処理を行ったところ、MβCDとは逆に動的比率が0.76から0.82に増加した。この時IRの速い成分には影響はなく、遅い拡散成分の比率のみが同程度増加していた。IRの拡散定数は各成分とも若干減少したが顕著なものではなかった。さらに、これらの処理条件において、IRのインスリン刺激による自己リン酸化を調べたところ、MβCDでは活性の増減は観察されなかったがD-PBPPでは顕著な低下が見られた。 この結果は、膜受容体が脂質組成変化の影響が異なる複数の領域(マイクロドメインを含む)に存在し、領域ごとに受容体の活性調節が行われている可能性を示しており、生細胞において1分子観察以外の方法でマイクロドメインの存在を示す重要な証拠となり得る。
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