2009 Fiscal Year Annual Research Report
転写開始複合体によるプロモーター依存的転写レベル調節機構の構造学的研究
Project/Area Number |
21770125
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
伊藤 啓 National Institute of Genetics, 構造遺伝学研究センター, 助教 (10390626)
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Keywords | タンパク質X線結晶構造解析 / 構造生物学 / RNAポリメラーゼ / 双晶 |
Research Abstract |
本研究では、プロモーターの配列によって転写の強弱に違いが生じる分子機構の構造生物学的理解を目的としている。目的達成に向けて本年度は、その機構の鍵として注目しているシアノバクテリア由来ポリメラーゼβ^'サブニットに存在する挿入ドメイン(CBID)の結晶構造解析を試みた。 まず、CBIDと活性中心との構造学的関係を明らかとするために、β^'サブニット、ならびにCBID周辺の活性中心を様々に含む部分の組み換えタンパク質を調製した。それぞれについて結晶化条件の探索を行ったが、目的とするタンパク質の結晶は得られなかった。 次に、結晶は既に得ていたが、その構造解析に成功していなかったCBID単体の結晶について、その分子末端のペプチド長を種々に変える事により結晶中での分子のパッキングに影響を与えて結晶の性質向上を図り、構造解析を成功させる事を試みた。得られた結晶から収集した複数のX線回折データを解析し検討した結果、これまで空間群P3121に属すると思われていたCBIDの結晶が、実際には空間群P31の結晶2つがb軸を互いに共有する完全双晶(twinning factor0.41)である事が明らかとなった。問題の解決に向けて結晶の調製段階で様々な検討を行ったが、結晶の外観や得られた条件は異なっていても、全てのCBIDの結晶が共通の結晶学的パラメータを持つ類似の結晶であることが分かった。本結晶では非対称単位中に存在するタンパク質分子の数が多い(10分子以上)上に分解能も向上が見込めない事が予想されたため、CBIDの立体構造を得るのは今後も困難であると判断した。そこで次年度以降は、研究目的の達成に向けてより重要な位置を占める、大腸菌RNAポリメラーゼの転写開始複合体のアイソフォームの調製とその結晶化、構造解析に集中して研究を進める。
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