2010 Fiscal Year Annual Research Report
転写開始複合体によるプロモーター依存的転写レベル調節機構の構造学的研究
Project/Area Number |
21770125
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
伊藤 啓 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助教 (10390626)
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Keywords | タンパク質X線結晶構造解析 / 構造生物学 / 転写開始複合体 / 結晶中での分子間化学的架橋 |
Research Abstract |
本研究では、プロモーターの配列によって転写の強弱に違いが生じる分子機構についての構造生物学的理解を目的としている。昨年度は、その機構の鍵として注目しているシアノバクテリア由来RNAポリメラーゼβ'サブユニットに存在する挿入ドメイン(CBID)の結晶化を行った。今年度は、CBIDの結晶性の改善と、RNAポリメラーゼ酵素の結晶化に向けた実験を行った。 CBIDについては、昨年度得られた結晶は低分解能の回折データしか与えず、かつ双晶であり構造解析は不可能であった。状況改善に向けて結晶化に用いるタンパク質の末端長を様々に変化させ結晶中での分子配向を変える事を試みたが、結晶が得られなくなるなど効果が得られなかった為、得られた結晶に処理を加え結晶中の分子の配向に影響を与える事を試みた。得られているCBIDの結晶は溶媒含有量が高く(>70%)、結晶への後処理の効果が大きいと予想された為である。様々な脱水処理の他、脱水処理中に起こる分子配向の変化に期待して結晶中での化学修飾による分子間架橋も試みた。X線回折実験の結果、結晶の格子定数には変化がみられたが、分解能向上や双晶の解消など目的とした回折データの品質向上への寄与は観察されなかった。 大腸菌由来RNAポリメラーゼについては、β'サブユニットのC末端にHisタグが付く様に組み換えた菌体を用い、そこからHis-tagアフィニティーほか各種クロマトグラフィーを組み合わせ酵素の調製を行った。 最終目的とする複合体を調製する前に、まずは得られたサンプルを用いて酵素単体での結晶化が可能かどうかのスクリーニング実験を試行したが、少なくともこれまでに確認した条件下では結晶の成長は確認されなかった。今後、DNA・RNAを加えた複合体での結晶化条件探索実験を本格化させる。
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