2009 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトールの特異的脂肪酸組成の生物学的意義の解明
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21770133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 貴雄 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (50361605)
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / アラキドン酸 / 脂肪酸転移酵素 |
Research Abstract |
ホスファチジルイノシトール(PI)は、イノシトール環のリン酸化によりPI結合タンパク質を時空間的に制御し、細胞の増殖、遊走、細胞骨格制御、小胞輸送など様々な生命現象に関与するリン脂質である。PIは極性基の特性のみならず、脂肪酸鎖についても特徴的な構造を持つことが知られており、その大部分はsn-1位にステアリン酸(18:0)、Sn-2位にアラキドン酸(20:4)を有する。我々は最近、PIの特徴的な脂肪酸組成を規定する分子として、PIのsn-2位にアラキドン酸を導入する脂肪酸転移酵素mboa-7/LPIATを同定した。本研究の目的は、これまで全く解明されてなかったPIにおける特徴的な脂肪酸分子種の生物学的意義を、LPIAT欠損個体(マウス、線虫)およびLPIAT欠損細胞(ES細胞、MEF)という申請者独自のツールを用いて解明することである。 21年度において、LPIAT欠損マウスの解析を行った。ヘテロマウス同士の交配で生まれたLPIAT欠損マウスは、メンデル則で予想されるよりも少ない割合で生まれ、生まれた個体も30日以内に致死となった。このことにより、LPIATは発生、生存に必要であることが示唆された。LPIAT欠損マウスの臓器の組織切片を作成し形態観察を行ったところ、脳の形態に異常があることがわかった。特に大脳皮質や海馬の層がWTと比較して薄く、萎縮し、層構造が乱れていることがわかった。より詳細に解析を行ったところ、LPIAT欠損胎児マウスの脳において、神経細胞の新生、分化はほぼ正常であるが、神経細胞の移動と突起の伸展に異常があることが示唆された。
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