2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトールの特異的脂肪酸組成の生物学的意義の解明
Project/Area Number |
21770133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 貴雄 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (50361605)
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / アラキドン酸 / 脂肪酸転移酵素 |
Research Abstract |
ホスファチジルイノシトール(PI)は、イノシトール環のリン酸化によりPI結合タンパク質を時空間的に制御し、細胞の増殖、遊走、細胞骨格制御、小胞輸送など様々な生命現象に関与するリン脂質である。PIは極性基の特性のみならず、脂肪酸鎖についても特徴的な構造を持つことが知られており、その大部分はsn-1位にステアリン酸(18:0)、sn-2位にアラキドン酸(20:4)を有する。我々は最近、PIの特徴的な脂肪酸組成を規定する分子として、PIのsn-2位にアラキドン酸を導入する脂肪酸転移酵素mboa-7/LPIATを同定した。本研究の目的は、これまで全く解明されてなかったPIにおける特徴的な脂肪酸分子種の生物学的意義を、LPIAT欠損個体(マウス、線虫)およびLPIAT欠損細胞(ES細胞、MEF)という申請者独自のツールを用いて解明することである。 22年度において、線虫変異体を用いた解析から、PIのsn-1位にステアリン酸を導入する脂肪酸転移酵素acl-10/LYCATを新たに同定することに成功した。本酵素の変異体ではPIのsn-1位のステアリン酸が大きく減少しており、幹細胞の非対称分裂に異常が生じていた。本研究はリン脂質のsn-1位の脂肪酸鎖の生物学的意義を示した初めての知見である。
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